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自民党に古いタイプの営業マンの悲哀が漂ってくるかもしれない

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

今月27日の総務会で自民党は、1000人以上の党員獲得目標を著しく下まわった党所属の国会議員の名前を公表する方針を決めた。

これを報じた『読売新聞』の記事(6月28日付電子版)によれば、「関係者によると、昨年間末時点で議員の約4割が目標に達していないという」。党員獲得にノルマがあることにも驚くが、そのノルマを4割の所属議員が達成していないというのもビックリだ。

「罰」を与えるということは、ノルマが達成できていない理由は「議員の怠慢にある」と自民党は判断したことになる。

これまでも党員獲得のノルマはあり、ノルマを達成できない議員に対しては不足党員1人につき2000円の罰金を自民党は課してきた。それでも「怠慢」な議員がいるため、今回、さらに罰を強化したというわけだ。

企業でも、営業にノルマを課すのが当たり前だった時代がある。営業マンのケツを叩けば売上は伸びるとの発想だ。それで通用した時代は、確かにあった。しかし最近は、営業マンのケツを叩くだけでは売上増とならない現実に冷静に向き合う企業は増えている。営業が力を発揮するためには、それをサポートする情報とツール、なによりも「売れる商品」の開発が重要であり、そこの強化こそ優先すべきだと気づきはじめているのだ。

それとは逆のことをやっているのが、自民党のようだ。野党に転落した2012年に73万人台に落ち込んだ自民党員は、2016年末には104万人台となったが、自民党が目標に掲げる120万人には届いていない。そこで「罰」を強化することで議員にノルマを達成させ、目標も達成しようというわけだ。

先述したように、売れる商品がなければ営業マンのケツを叩いても売上が伸びないことを企業は学んできている。それを自民党は学んでいないようだ。いくら議員のケツを叩いたところで、売れる商品、つまり集まってくる魅力ある自民党という商品でなければ党員は集まらない。自民党は、魅力があるどころか、議員の失言・失態が相次ぎ、「欠陥商品」と受け取られかねない状態にある。ここでの「罰」強化からは、自民党の焦りしか感じられない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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