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新浪氏の社長就任で、サントリーの世界戦略が大きく動きだす

前屋毅フリージャーナリスト

「サントリーホールディングス(HD)は23日、ローソンの新浪剛史会長(55)を10月1日付で社長に招く人事を固めた」と、今朝の『日本経済新聞』が1面トップで報じた。サントリーとして正式に発表したわけではないが、サントリー関係者に確認すると「その方向ですすむようです」とのコメントが戻ってきた。

今年1月にサントリーは、バーボン「ジムビーム」で知られる米蒸留酒最大手ビーム社を1兆6500億円という巨額で買収すると発表して話題になった。「いまごろバーボンで国内市場は拡大できるはずがないのに冒険すぎる」との声が強かったのも事実だ。

しかしサントリーの狙いは、日本国内でジムビームの販売を伸ばし、業績拡大につながげることにあったわけではない。サントリーが欲しかったのは、ビーム社の世界的な販売網である。

ビーム社の販売網にサントリー製品をのせて、世界的な販売拡張を狙っているのだ。そのため数年前から山崎工場などでは大増産体制をとっており、世界での販売量拡大を準備してきた。ビーム社買収は、その戦略の一環だったわけだ。

そして新浪氏を社長に迎えるのも、まさに国際的に販売を急拡大させる戦略の一環だといえる。新浪氏は三菱商事の勤務中にハーバード大学に留学し、経営学修士号(MBA)を取得している。さらにローソンでは、いち早く中国への進出を手がけて成功させた。経営者としての国際感覚はじゅうぶんといえる。

さらに同氏は、先日のテレビ番組で「次はグローバルなビジネスを手がけたい」と意欲満々だった。そのときの彼は、すでにサントリー社長就任を決めていたはずで、グローバルなビジネスはサントリーでの仕事を念頭においていたのだろう。

ビーム社の販売網を取得し、さらに新浪剛史氏というローソンを急成長させた敏腕経営者を迎え、「世界のサントリー」へ向けた戦略が動きはじめることになる。問題は、個性の強いことで知られる佐治信忠氏が、社長の座を譲る新浪氏にどれだけ任せられるかだろう。二頭体制になる懸念があり、そうなるとギクシャクばかりが目立つことにもなりかねない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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