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東京が壊される・・・

前屋毅フリージャーナリスト

月曜日(6月5日)の東京メトロの電車に乗っていて、固まった。目についた『週刊 現代』(講談社)の吊り広告の右端に、大きく「逆転!2020年オリンピック 東京に内定」と謳ってあったからだ。

週刊誌の吊り広告で右端を占めるのは、ずっと前からトップ記事と決まっている。世の中が変わって、マスメディアも変化を問われているといわれながら、この決まりは変わっていない。

9月7日の国際オリンピック委員会(IOC)総会において2020年のオリンピック競技大会の開催都市が決まるが、それが東京に内定したというスクープ(?)である。吊り広告の右端を占める価値は充分にあるということなのだろう。

2020年のオリンピック誘致のために、「感動を」という謳い文句のポスターが東京都内ではやたらとめにつく。スポーツは感動をあたえてくれる。世知辛さだけが際だってきている昨今、スポーツは人に潤いと明るさをもたらしてくれる。その祭典であるオリンピックを東京でやろうというスローガンは、一見、もっともらしく聞こえる。

しかし、なぜ東京でやらなければいけないのだろうか。その答が、『週刊 現代』の吊り広告にあった。サブタイトルに「東京は空前の建設ラッシュに」とある。

オリンピックが開催されることになれば、競技施設はもちろん、世界各国から押し寄せてくる大勢の観光客を当て込んだ施設がつくられることになるだろう。だから「空前の建設ラッシュ」になる、というのだ。

現在の東京はコンクリートだらけの街である。それを都会というのかもしれないが、見方を変えれば「自然を失った街」でしかない。

空前の建設ラッシュは、建設業界は大儲けするかもしれないが、さらに東京をコンクリートだらけの街にし、自然を失った街を加速させる。造ることなのか、それとも壊していくことでしかないのだろうか。人が暮らすにふさわしい街なのだろうか。そんなことを、電車の吊り広告を見ながら考えていた。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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