「大学倒産」の向こうにあるのは「日本の倒産」か

■大学が潰れる・・・

大学が「倒産」する時代になってきている。東京女学館は2013年度の学生募集を停止し、在学生の多くが卒業する2016年には閉校する方針を示しているが、在校生や卒業生からの抵抗で紛糾している。しかし累積赤字はふくらむ一方で、具体的な改善策もないとなれば「倒産」は避けられないのだろう。

群馬県高崎市の創造学園大学などを運営する学校法人・堀越学園は、文部科学省(文科省)から解散命令を受けることになりそうだ。教職員への賃金未払いが続くなど経営が悪化する状況に、文科省もサジを投げたかたちだ。

少子化が叫ばれるなかで、小中学校の統廃合は急速に進んでいる。大学だけが安泰でいられると考えるほうが、おかしい。

実際、すでに私立大学の4割までが募集人数に対して入学者数が足りない「定員割れ」の状態に陥っている。これでは経営が成り立つはずがない。

大学も従来どおりの経営方針でやっていけるわけがない。とはいえ、頭ではわかっていても実践できない、改善の方法をみつけることができない、というのが現実のようだ。堀越学園にしても文科省から再三にわたって指導を受けていたにもかかわらず、改善策をみられないまま、解散命令を受けるような事態になってしまったわけだ。

東京女学館や堀越学園のようなケースが、これから増えくることはまちがいない。表面化していないだけで、かなり深刻な状況に陥っている大学が多いのも現実だろう。

■就職予備校化する日本の大学

もちろん、こうした事態に大学としても、ただ手をこまねいているわけではない。寄付を集めるのに奔走したり、広告宣伝に力をいれたり、努力の方向性が正しいのかどうかは別にして、それなりに努力はしている。

そして各大学とも力をいれているのが、学生に対する就職支援である。就職率の高さを誇示することで、多くの学生を集めようというわけだ。

早い時期からの就職指導で企業の選び方を教え、企業の採用担当者やOBを招いてのセミナーなどで企業とのコネクションづくりにも積極的に手を貸す。採用情報を細かく学生に伝えるのはあたりまえ、エントリーシートの書き方まで手取り足取りで教える、といったぐあいだ。

たとえば「就職に強い東京都市大学」を謳っている東京都市大学は、「キャリア教育については、1年生全員に『キャリアポートフォリオ』ファイルを配布し、大学生活の記録(財産)を蓄積させる取り組みや半期毎に『目標設定』、『振り返る』、『目標再設定』を行い、自ら行動するチカラを醸成させます」と就職に向けた徹底した体制をホームページ上で誇らしく力説している。同じ方向に向かい、多くの大学が走りはじめている。

大学は、まさに「就職予備校」化しつつあるのだ。すでに小中高の学校は「大学進学予備校化」し、その結果、大学で何を学ぶかではなく、合格することが目的になってしまっている。同じく大学の就職予備校化で、就職すること、しかも一流と呼ばれる企業に就職することが目的とされる傾向はさらに強まっていくだろう。

■自分で自分の首を絞める生き残り策

企業で何をやりたいか、何をやるか、ではなく、採用試験に合格することを目的に学生たちは走っているわけだ。小学生からやってきたことを、大学でも繰り返すことにほかならない。

そういう大学生活を送った学生たちが、いまの企業にとって必要な人材といえるのだろうか。入学試験に合格することだけを目標にしてきた学生が、大学で何をして、どう大学の質に影響を与えてきたかを考えれば、答えは明白だ。

最高学府といわれる東京大学が、優秀な留学生を迎えて大学としての質を上げようと今年から始めた9月入学制度では、海外からの合格者の3割までが辞退するという事態となっている。東大でさえこうなのだから、日本の大学がグローバルにはどう評価されているのか言わずもがな、だ。

その日本の大学が、こぞって就職予備校への道をひたはしりつつある。それが、グローバルな評価を上げることにつながるとはおもえない。生き残り策として必死に取り組んでいるのだが、生き残りにつながるのかどうか疑問でもある。

なにより、そんな大学を卒業してくる学生たちが日本の企業と日本経済を引っ張っていく存在になれるのか、はなはだ疑問というしかない。日本企業と日本経済は危機に向かっているのではないだろうか。                      <終>