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年齢、基礎疾患、肥満、性別、喫煙・・・新型コロナが重症化するリスクは?

忽那賢志感染症専門医
(写真:ロイター/アフロ)

この記事は2020年4月の情報に基づいたものです。

重症化リスクに関する最新の記事はこちらをご参照ください。

新型コロナに感染した人のうち、特にどのような人が重症化しやすいのかが徐々に分かってきました。これまでに分かっている、重症化のリスクについてまとめました。

新型コロナウイルス感染症の典型的な経過

新型コロナウイルス感染症の典型的な経過(筆者作成)
新型コロナウイルス感染症の典型的な経過(筆者作成)

新型コロナウイルスに感染すると、8割の人は風邪症状がダラダラと続きますが自然に良くなり、2割の人が肺炎症状が重症化して入院が必要となり、そして約5%の人が集中治療を必要とするほど重症になると言われています。

しかし、全ての人がこの確率で重症化するわけではなく、特定の重症化リスク因子を持つ人は、持たない人に比べて重症化しやすいことが分かっています。

年齢が最大の重症化因子

中国、イタリアでの年齢別にみた新型コロナウイルス感染症の致死率
中国、イタリアでの年齢別にみた新型コロナウイルス感染症の致死率

新型コロナウイルス感染症で重症化しやすいのは高齢者と持病のある方です。

中国での44672人、イタリアでの22512人の新型コロナウイルス感染症患者のデータによると、年齢が上がれば上がるほど致死率が高くなることが改めて数字として示されています。

30代くらいまでは亡くなる人はほとんどいませんが、40代以降から徐々に致死率が高くなり、80歳以上では15-20%という非常に高い致死率となっています。

アメリカでの新型コロナ患者の年齢別に見た入院者数、集中治療室入室者数、死亡者数とその頻度(CDCのデータを元に筆者翻訳)
アメリカでの新型コロナ患者の年齢別に見た入院者数、集中治療室入室者数、死亡者数とその頻度(CDCのデータを元に筆者翻訳)

アメリカでも同様の状況です。

20歳未満では入院する人もほとんどいませんが、20歳以上になると15%以上の患者に入院が必要になります。

そして年齢が上がるに従って集中治療室に入室する患者、死亡者が増えていきます。

また、決して若い人は安全というわけでなく、20代の世代でも頻度は高くないものの亡くなっている方がいます。

重症化する持病の種類は?

年齢だけでなく、持病を持つ方も重症化しやすいことが分かっています。

新型コロナ患者の基礎疾患と致死率(中国CDCのデータより筆者作成)
新型コロナ患者の基礎疾患と致死率(中国CDCのデータより筆者作成)

中国での約45000人のデータだと、持病のない患者と比較してがん、高血圧、慢性呼吸器疾患、糖尿病、心血管疾患の患者では致死率が高いことが分かっています。

またイタリアで亡くなった新型コロナ患者355人のうち、117人(30%)が虚血性心疾患、126人(35.5%)が糖尿病、72人(20.3%)が活動性のがん、87人(24.5%)が心房細動、24人(6.8%)が認知症、そして34人(9.6%)は脳卒中の既往があったとのことです。またこれらの亡くなった方では複数の持病を持っている患者が多く、平均2.7の持病を持っており、172人(48.5%)が3つ以上の持病を持っていたとのことです。

ちなみに私は気管支喘息なのですが、気管支喘息が慢性呼吸器疾患に当てはまるのかが気になるところです。

気管支喘息に関してはまだ十分なデータがありませんが、こちらの論文によると気管支喘息を持病に持つ新型コロナ患者では、重症化には関連ないとのことです。

肥満は重症化のリスク?

ニューヨーク市で診断された393人の患者のうち、35.8%に肥満(ここではBMI30以上と定義)があり、人工呼吸管理が必要となった患者のうち43.4%が肥満であったとのことで、重症化のリスクとして肥満の可能性が指摘されています。

さらに60歳未満の肥満は重症化のリスクであるとする報告も出ています。

だとすると私はかなりやばいことになります。

今日からダイエットに励むことにします。

しかし、肥満を代表して意見を述べさせていただければ、肥満そのものが重症化のリスクなのかはまだ断言できません。

肥満の方の多くが、高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などの持病を持っていることが多いので(自分で言ってて悲しいですが)、肥満そのものというより、肥満に関連した持病が重症化のリスクになっているのかもしれません。

一方、肥満によって横隔膜が圧迫され、肥満のない人に比べて肺の換気が十分できないために早期に人工呼吸管理が必要になる可能性もあるかもしれません。

とりあえずダイエット頑張ります。

男性であることも重症化のリスク?

女性よりも男性の方が重症化のリスクが高い可能性も指摘されています。

イタリアで亡くなった355人のうち、女性が3割、男性が7割であったと報告されています。基本的にイタリアの男女比は1:1のはずですので、この死亡者の男女比の偏りはただごとではありません。

また中国でも回復した患者のうち男性は55%であったのに対し、亡くなった患者のうち男性は73%であったと報告されています。

男性であること自体が直接重症化と関連しているのか分かりませんが、これまでの報告からは女性よりも男性の方が重症化しやすいと言えそうです。

肥満かつ男性である私も徐々に危機感を感じてきました。

喫煙は?

喫煙が新型コロナの重症化であるという報告も出てきています。

日本禁煙学会は「喫煙歴がCOVID-19肺炎の最大の重症化因子」として、これまでの喫煙と新型コロナに関する情報を公開しています。

ここで紹介されている中国の論文では、78人の新型コロナ患者を検討したところ喫煙歴によって約14倍重症化しやすいとのことです。

しかしこの論文は患者数が十分とは言えず、これで結論を出すのは早計かもしれません。

またイタリアでは24%が喫煙者であり、この高い喫煙率がイタリアでの高い致死率の要因の一つではないかと指摘する専門家もいるようです。

喫煙自体は新型コロナはともかく様々な疾患の要因や増悪因子になりますので、新型コロナ対策として禁煙をすること自体は良いことだと思います。

肥満男性の私も喫煙はしていないので、この点はセーフです。

重症化しやすい人が気をつけるべきことは?

CDC(米国疾病予防センター)は、現時点で重症化のリスクが高い集団として、以下のように定義しています。

新型コロナウイルス感染症が重症化しやすい人

・65歳以上の人

・老人ホームや介護施設に住んでいる人

・慢性呼吸器疾患、中等度〜重症の気管支喘息

・重篤な心疾患

・免疫不全患者:免疫不全の状態を引き起こす原因としてがんの治療、喫煙、骨髄移植、臓器移植、HIV感染症、ステロイドやその他の免疫抑制薬の長期使用など

・重度の肥満(BMI40以上)

・糖尿病

・透析・慢性腎疾患

・肝疾患

(CDC. People Who Are at Higher Risk for Severe Illnessより)

こうした重症化のリスクがある人はどのようなことに気をつければ良いのでしょうか?

やるべきことは基本的には変わりません。

新型コロナウイルス感染症が重症化しやすい人が気をつけるべきこと

・外出を控える

・こまめに手を洗う

・人との距離を保つ(2M以上)

・よく触る環境表面をこまめに消毒する

です。

正しい手洗いと咳エチケット(首相官邸HPより)
正しい手洗いと咳エチケット(首相官邸HPより)

咳やくしゃみなどの飛沫から感染することから、これらの症状のある人は周りの人にうつさないようにマスクの着用など咳エチケットを心がけましょう。

また手など触ったところからウイルスが広がり感染する可能性もあるため、こまめな手洗いを行うようにしましょう。

3つの密を避けましょう(首相官邸HPより)
3つの密を避けましょう(首相官邸HPより)

新型コロナウイルス感染症は、「密閉・密集・密接」の3要素を持つ空間で広がりやすいことも分かっています。

このような「3密空間」にいる感染者は、いない感染者よりも18.7倍も他の人へ感染させやすいとのことです。

老若男女、全ての人が「3密空間」を避けることが新型コロナ対策では重要です。

肥満中年男性でおまけに痛風持ちの私も気をつけますので、皆さんもしっかりと感染予防を行いましょう!

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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