「雑談+相談」=ザッソウでイノベーションを起こせ!【倉貫義人×倉重公太朗】第3回

倉重:さて、「雑談してるなんてサボってるのか!」などと思う方を昭和ストロングスタイルという言い方をしていますけれども、そういった方々がイメージするという意味では、昔もザッソウをやっていたのではないかと思うわけです。例えば、飲みニケーションという形で、夜、居酒屋で愚痴りながら。

倉貫:喫煙室など。

倉重:そうです。喫煙室などもそうです。そういう話ならば理解していただけるのではないかと思います。やり方が変わっただけなのではないかと思っています。

倉貫:そうですね。むしろ、本当に何でもない話よりもザッソウになることで、仕事の相談ができるようになったり、仕事にまつわる雑談ができるようになったりすれば、より生産性が高い状況になります。

倉重:ただ愚痴るだけではなくてです。結局、飲みニケーションですと、やはり育児している人や介護をしている人は参加できないですし、愚痴を言っているだけでは何も先に進まないので、きちんと雑談というのが仕事に意味があるのだということを、皆さんに意識していただくだけで随分、変わってきます。まさにイノベーションの仕組みということではないかなと思うのです。イノベーションが生まれないから、イノベーション対策会議などをやってもしょうがないのです。

倉貫:イノベーションを起こせというメールが一番、イノベーションが起きないです。イノベーションというのは結果に過ぎなくて、結果を起こす土壌を作るにはどうすればいいかというふうに考えたほうがよくて、これも僕らがザッソウに込めた意味が、実はもう1つありまして、雑談と相談をセットにしましょうというのもあるのですが、もう1つは雑に相談しましょうという意味でもあるのです。雑な相談。

倉重:ラフでいいですと。

倉貫:そうです。非常にラフな相談のことをザッソウと僕らは呼んでいます。

倉重:きちんと相談書というようにまとめてこなくていいですと。

倉貫:上司に相談に行くときに、きちんとA4、1枚にまとめて持って行くことが、無駄なコストです。

倉重:これで相談に行ったら、怒られるのではないか。

倉貫:ストロングスタイルの方は、「きちんと考えて持ってこいよ」と言うのですが、「きちんと考えて持ってこい」というのは呪いのような言葉で、言われたほうは何を思うかというと、次の相談に行くときが非常に怖いです。

倉重:きちんと調べたのかと。

倉貫:「きちんと考えなさい。そのような考えで持ってくるな」と言われたら、どうなるかと言うと、きちんと精緻に調査をして、すごく考えて、1週間考え抜いた後、「相談します」となります。それで合っていればいいのですが、違ったときに何が起きるかというと、1週間が無駄になります。非常に手戻りが多いし、無駄なことが多くなります。もっと雑に相談してくれたら、方向性が確認できます。「簡単なもの、雑なレベルでいい」と言っているのに非常に立派なレポートが出てきて、「部長に少し見せるだけだったのに、そんなに立派なレポートを作ってきてどうするんだ…」ということがあります。でも、雑に仕事をしてはいけないと思っていると、そうなってしまいます。

倉重:まさに今、働き方改革で言われている生産性を上げましょうという話とつながってきます。

倉貫:本当にそうです。雑に相談することで、小さなキャッチボールをすると、方向感がだんだん合っていくので、無駄なことをせずにゴールにたどり着けます。

倉重:最初の段階の方向性だけ間違えないようにすればいいのですね。明後日の方向に行ってから戻るのは大変ですから。

倉貫:それで微調整をしていくというのもありますし、今の仕事は、先ほどのお話ではないですが、正解がないです。決まった正解を部長が絶対持っているならば、しっかり考えて持って行けばいいのですが、実は、お願いした側も正解が分からないということが珍しくありません。ならば、少し進んだ状態で相談していくことで、成果物に対するお互いの解像度を上げていくことができると思います。実は、雑に相談するというのは、仕事を進めていく、正解のない問題を解決するためのいわゆる手法ではないかと思います。

倉重:むしろ、正しいやり方なのではないかということですね。そういったザッソウをより自然発生的に生じさせるために、今、ソニックガーデンの中で、会社づくりという物理的な箱の中で意識されていることや、このようなイベントをやっているなど、いろいろと仕掛けがあると思うのですが、そういった取り組みを少しご紹介いただけるとありがたいです。

倉貫:僕らは非常にチームを大事にしていて、チームのコミュニケーションの土台として雑談をしたり、相談をしたり、ザッソウしていくということを大事にしていると言いながら、実は、僕らの会社は本社オフィスがありません。

倉重:会社がない。オフィスがないのですか。

倉貫:オフィスビルのようなものは2016年までは賃貸で東京の渋谷に借りていたのですが、もうやめようということで、実は僕らの会社は社員が40人いるのですが、今、18都道府県にまたがって社員が住んでいます。これは18都道府県に支社があるわけではなくて、みんな家で仕事をやっています。つまり、在宅勤務の人たちが圧倒的にたくさんいます。

倉重:海外で旅をしながら、仕事をしている人もいるのですよね。

倉貫:そうです。オーストラリア1周しながら仕事をしたり、シベリア鉄道に乗りながら仕事をしたりしている人がいます。

倉重:シベリア鉄道に乗りながら。

倉貫:今、マルタからハンガリーに2カ月行っている若者がいます。

倉重:それでも仕事ができるのですね。

倉貫:どこにいても仕事をしていますというのが、僕らがやろうとしていることです。ただ、日本全国から在宅勤務で、海外を移動しながら仕事をするという人たちが、どうしたら、コミュニケーションが取れるのでしょうか。いわゆる相談も、「少しいいですか」「少しザッソウしたいです」「雑な相談いいですか」と気軽に言えることが大事なのですが、オフィスにいなくて気軽に相談できるものか。

倉重:チャットなどだと少しやりづらいですよね。

倉貫:そこです。チャットで僕らも1回試したことがあるのですが、チャットは相手が今、そこにいるかどうか分からないです。緑のマークでオンラインと出ているのですが、オンラインだからといって本当に反応があるかどうか分からないです。なので、声を掛けるのにハードルが上がるわけです。きちんとまとめてから、チャットには書き込まないとという気持ちになります。雑に書けないのです。

倉重:それでは意味がないですね。

倉貫:ザッソウしたいのに、チャットにはザッソウが書けないという問題があります。オフィスだったら、「少しいいですか」とザッソウができます。今、自販機に行っている途中なので、少し声を掛けようと言えるのは見えるからです。かといって、僕らは全社員を東京に集めるということは、もうできないのでいろいろと考えました。オフィスはいらないけれども、場所が必要です。場所というのは場ということです。

 昔から、経営学を調べるとずっと「場(ba)」と言われていたのです。オフィスを場と言っていたのです。ホンダのワイガヤも、野中郁次郎先生のSECIモデルというのも、イノベーションが生まれたり、一体感が生まれたりするためにはオフィスではなく場が必要だと言っています。場とは何かと言うと、僕は時間と空間が交わる場所が場だと思っています。つまり、時間と空間を同じ場所にして揃えておけば、そこが一緒に働く空間になって、時空が揃います。時空が揃っている場があれば、コミュニケーションができます。

 そこまで分析ができたら、これは物理的なオフィスではなくて、プログラムで再現できるのではないかと、バーチャルに場を作ろうと考えました。バーチャルオフィス、仮想オフィスという発想で、インターネット上にオフィスを作っています。なので、海外にいようが、地方にいようが、東京にいようがみんな朝になったらそこに出社してくるのです。

倉重:画面を見たことがありますけれども、顔写真などビデオカメラが写って、本当におはようございますという感じで言うのですよね。

倉貫:そうです。そこに出社すると画面上に自分の今の顔が写ります。今の自分の顔だけではなくて、みんなの顔が写ります。そうすると、朝9時から10時ぐらいに見ていると、徐々に人が増えてくるのです。

倉重:誰が来たなと。来ていないけれども、来たなと分かるのですか。

倉貫:出社したなと。不思議な感じです。「おはようございます」とみんな言います。スラックやチャットで「おはようございます」と言っている会社はあまりないです。これはなぜかと言うと、3人、5人ならいいですけど、30人の会社で全員が「おはようございます」と言ったら、30人分の未読が入るわけです。

倉重:それは少しハードルが高いですね。

倉貫:そこで「おはようございます」と言えるハートの強さはないです。だから、みんな言わないです。

倉重:いちいち迷惑だなと思ってしまいます。

倉貫:「ご飯に行ってきます」なども書けないです。でも、僕らはそれが大事だと思っているので、それを書けるツールにしました。

倉重:では、ご飯に行ったり、離席したりするときは、一旦閉じた感じの表示になって、いなくなったというのが分かるわけですね。

倉貫:あいさつも書けます。

倉重:その場にいる間は話し掛けていいという形ですね。

倉貫:そうです。画面に顔写真があれば、今、仕事しているとすぐ分るので、今日は休みではないということも分かっています。

倉重:集中したいというようなときは別の表示になりますか。

倉貫:集中したいときはミュートボタンというのがあって、今、集中していますというマークが出ます。

倉重:それも相手に表示されるのですか。

倉貫:そうです。

倉重:今、話し掛けては駄目なのだというのが分かるわけですね。変な殺気とかを出さなくても分かるわけですね。

倉貫:大丈夫です。逆に考えて、仮想的な場所さえあれば、そこにさえ出社していれば、肉体はどこにいてもいいということです。なので、海外に行く人もいます。

倉重:ソニックガーデンさんの自由が丘の会社に一度お伺いしたことがあるのです。実際、豪華マンションの一室で、でも、そこに全員来るわけではありません。

倉貫:全員は入れないです。

倉重:一体、どういうことだ、と思っていたのです。

倉貫:あそこは東京近辺で家のリビングなどで仕事をしにくい人たちが集まって仕事をする場です。

倉重:来たい人が勝手に来てくださいという場だということですか。

倉貫:そうです。なので、僕らが本当に自分たちの場所はどこか、オフィスはどこかと言われたら、仮想オフィスのことを言います。仮想オフィスにいて顔さえ見られれば、何が起きるかというと、ザッソウできるのです。なので、僕らの会社は毎日のように朝会というのをやっていますし、困ったら、暇な人を捕まえて、少し相談したいと言います。よくやるのは、プログラムを作っていて、難しい問題にはまって解決できないことがあります。どうしたらこの不具合、バグを直せるだろうかと考えるときに、誰かに声を掛けて、少し、「クマになってくれ」と言うのです。「いいよ」とクマになってくれます。それでテレビ会議につないで、説明します。「ここはこうなって、ここで問題が起きているのだけれども」と、自分で説明しているうちに解決することが結構あるのです。

倉重:シャドウですね。

倉貫:相手が何も言わなくても、相手に説明しているうちに解決することがあります。その話は誰かがいてくれるから説明ができるということがあって、それをクマってもらうと言います。これは、昔からあるコンピューター業界の逸話で、昔のアメリカかどこかの大学のコンピューターセンターで、学生がいつも相談に来ると。学生でも相談員に説明しているうちに自分で勝手に解決して帰っていくと。これはもしかして、相談する人が来たら、クマのぬいぐるみを置いておけば、学生はクマのぬいぐるみに話しているうちに解決するのではないかということで、テディベア効果という逸話があります。

倉重:なるほど。実際やってみたのですか。

倉貫:僕らはそれを社内では「クマってほしい」と言います。クマの代わりをしてください。

倉重:でも、そのように話せるのも普段、雑談をして信頼関係を築けているからというところもあるのでしょう。

倉貫:そうです。

倉重:やはりGoogleの有名なチームアリストテレスの調査も心理的安全性というところにも、当然これはザッソウが、非常に効果があるということですか。

倉貫:そうです。鶏と卵ではあるのですが、心理的安全性が高いからザッソウができるというのもあるし、普段から雑談し合えているから、心理的安全性が高まるというのがあって、これは順番ではないと思っていて、両方を意識していくことで、チームのレベルが上がっていくのではないかという感じはしています。

対談協力:倉貫 義人(くらぬき よしひと)

株式会社ソニックガーデンの創業者で代表取締役社長。「心はプログラマ、仕事は経営者」をモットーに、ソニックガーデンの掲げるビジョン達成のための経営に取り組んでいる。

略歴

1974年京都生まれ。1999年立命館大学大学院を卒業し、TIS(旧 東洋情報システム)に入社。2003年に同社の基盤技術センターの立ち上げに参画。2005年に社内SNS「SKIP」の開発と社内展開、その後オープンソース化を行う。2009年にSKIP事業を専門で行う社内ベンチャー「SonicGarden」を立ち上げる。2011年にTIS株式会社からのMBOを行い、株式会社ソニックガーデンの創業を行う。