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【豊田圭一×倉重公太朗】「日本人はラテンマインドを持つべきだ!」第2回~新時代を生き抜くマインド~

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

倉重:グローバルマインドセットの研修は、海外へ駐在する人や赴任する人には必要かもしれませんけれども、「僕らは日本でずっと仕事をやっていますから関係ないよね」と思う人もいるかもしれないですよね。そういう意見についてはどう思います?

豊田:それに関していうと、先ほど言った日本もグローブの一つですよね(注:グローバルの一種の意)ということもありますし、そして僕らがこの研修でフォーカスしているのは語学力を高めることでもなく、知識・スキルをインプットさせることでもなく、アウトプットしかしないので、そこで「できた!」と自己肯定感を高めたり、「チャレンジするのは楽しいな!」という気持ちに変化する研修なので、鍛えるところを一言で言うとグローバルマインドセットという言葉を僕らは使うのです。

倉重:それはどういう意味ですか。

豊田:グローバルで成果を出す人のコンピテンシーはいくつかの要素があって、やっぱり語学力が必要とか、異文化理解が大切だよねとか、そもそも仕事力が重要とか、専門性がなくては駄目とかリーダーシップが欲しいとかいろいろあるんですが、ことグローバル環境での仕事においてはいくら仕事ができても、いくらTOEICが高くても「自分にはできない気がする」とか「そういう環境でやりたくない」とか、そうしたらもう何も始まりません。

倉重:マインドの部分が大きいということですね。

豊田:すごく大きいです。例えば、彼はできるだろうと思ってアサインをして、駐在に行かせてもメンタルをやられて帰ってきてしまうとか。

倉重:メンタルをやられてしまう例は現にありますね。

豊田:あとは現地に溶け込みたくないとか溶け込めないとか、スキルとか知識とか仕事力ではないのですよ。マインドに起因するのです。

 ですから、今その活躍できる人たちに一番足りない、もしくは欲しい要素はグローバルマインドセットだと思っていて、僕が招聘(しょうへい)研究員をやっているの早稲田大学のトランスナショナルHRM研究所というところがあるのですが、そこの白木先生に協力してもらってグローバルマインドセットを要素分解したのが7つの要素で、それは主体性とか行動力とかメンタルタフネス、適応力、パッション、言語に依存しないコミュニケーション能力、どこでもやっていける自信なのです。でも、これらの要素って日本でも欲しいものではないですか、グローバルは関係ないですよね。

倉重:確かにこれはもう海外とか関係ないですね。

豊田:関係ないですよ。ですから、僕の研修はそれを鍛えるものですから、別にグローバル研修とは言えないと思ってたりもします。例えば、同じ会社でずっと働いているとだんだん視野が狭くなったり、外の世界で自分は通用しないのではないかという気になってきたりします。あとは、同じ会社にいたとしても外部環境がどんどん変わっていくことで、日本にいてもアウェイな環境はどんどん出てくるのです。時代の変化とともに。この不確実な。

倉重:VUCA時代ですね。

豊田:VUCA時代と呼ばれていますよね。VUCA、Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguityという、不確実でスピードが速くて曖昧で複雑で、こういう世の中において1つのところにとどまっていても変化があるので、そこに対応できるのは主体的に行動して、適応力があって、そしてメンタルタフネスがあってという人たちなので、日本にいても完全に必要な要素を鍛える研修を僕はやっていますから、グローバルもグローバルではないも関係ないです。もうグローバルというのを消してしまいたいぐらいです。

倉重:本当ですね。まさにそのグローバルというか、これからの時代のマインドセットという感じですね。

豊田:だと思います。

倉重:日本においてもどんどんこれから終身雇用が崩壊して、雇用が流動化していっている最中ですし、その中でやはり同じ会社でもそれでもやはり安住したい、今の楽なコンフォートゾーンにいたいという気持ちはすごく皆さん多いと思うのですが、ではその会社はいつまでありますかという話ですし、どこかの外資系と合併するかもしれませんし、お客さんが突然海外相手になるかもしれませんし。

豊田:そのときに周りのせいにしてもいいのですけれども、自分の人生ですから。うちの会社が合併してしまってこうなってしまった、「僕は不幸だ、、、」と。人のせいにするのは勝手ですけど、それで楽しいですかという話で、ですからやはり自分の人生を生きるためにはやはり自分が主体的にその行動をして、アクションを起こして結果を出すしかないと思うんです。でも、それは別にすごくスーパーマンを求めたいわけではないし、何か強い人というよりも、しなやかに強い人、マインド的にというのを鍛えたいなと思っています。

   僕が思う、よくグローバル人材のあなたの定義は何ですかといわれるのですけれども、僕はどこに行っても普通に成果を出せる人と思っているのです。

倉重:確かに豊田さんはどこに行っても豊田さんですよね。

豊田:僕は結構そうだと思います。スキル的に何かにすごく秀でているとは全く思いませんが、どこへ行っても普通でいられることは武器ですね。つまり、ということは日本で成果を出せない人が海外で成果を出せるわけではありません。でも、もったいないのは、日本で成果を出している人が、自分のコンフォートではないところ、アウェイな環境で成果を出せないということなんです。

倉重:どこにいても今の自分を出せる、これが大事だということですね。

豊田:そうです。

倉重:だから、豊田さんは全世界どこへ行っても美女と写真を撮るんですな!

豊田:えーーっと、そこ来ますか?(笑)まぁ、そうですね、そうとも言います。どこへ行ってもはべらすと。

倉重:はべらせていますよね、いつもどおりの豊田さん。

豊田:いつもどおりです。

倉重:世界中で。

豊田:平常運転と。

倉重:皆さん、そういうマインドを持つと日本人も随分強くなりますね。

豊田:そうなのです。でも、これはラテンマインドなのかといったら、実はサムライスピリットですよ。

倉重:どういうことですか。

豊田:世界中が憧れる武士道、サムライスピリットです。

倉重:死ぬことと見つけたりですね。

豊田:一言で表すとそれは不動心もしくは平常心とも言います。平常心ということは、つまりどこに行っても同じパフォーマンスが出せるということですから。

倉重:いつもどおりですね(笑)。

豊田:いつもどおりです。あがってしまっていつものパフォーマンスが出せなかったではなく、どこに行っても普通に発言をする、どこに行っても手が挙げられる、どこに行っても同じ成果が出せる。高いスキルや知識はあるのに成果が出せないという人がいますから、そのマインドセットはイコール武士、サムライスピリットと同じです。僕が言っているグローバルマインドセットとサムライスピリットは同じではないかなと思います。

倉重:そういうふうにだんだん思ってきましたか。

豊田:思っています。

倉重:そんな豊田さんはリーダーシップの研究でスペインの大学院に行かれてますよね。

豊田:一昨年からスペインの大学院に数ヶ月に一度のペースで通っていまして、昨年、世界最先端のリーダーシップ修士プログラムを卒業しました。

倉重:やられていましたよね。それはどういう内容だったのか、少しご紹介をお願いします。

豊田:ティール組織ってあるじゃないですか。

倉重:はやっていますね。

豊田:かなり骨太の本ですよね。今ヒエラルキー型の組織が成果が出せなくなってきました。そして、そのような組織において一人一人が疲弊してしまっている状況があります。では、どういう組織が社員が皆ハッピーで、そして組織としても成果を出せるのだろうという感じの内容ですが、僕が学んできたリーダーシッププログラムは一言で言うと、ティール組織型のリーダーはどうあるべきかというような感じでした。

倉重:その要点をお願いしたいのですが。

豊田:一番最初始まったのは、世界中のリーダーたちが疲弊しているというところから始まりました。要は、先ほども出てきたVUCAな時代に、これは日本人も外国人も関係なくリーダーたちは疲弊していると。なぜなら、リーダーの仕事は意思決定なのですけど、VUCAな時代に「倉重部長、これはどうすればいいですか?意思決定をお願いします!」と言っても、「僕もどう判断したらいいのか分かりませんよ。」ということなんです。そして、これは部長だけじゃなく、多くの社長でも同じです。

   例えば、これからイーロン・マスクさんや孫正義さんなどのモンスターのような人たちでしたら別にいいですよ。

倉重:皆がそうではありませんね。

豊田:そうなんです。大企業であってもその多くはサラリーマン社長という感じになりますし、そんな彼らには自分の上司だった元社長がいます、元会長がいます、相談役がいます、そして株主がいますというような中で、上からは成果を求められ下から突き上げを食らいます。そして、リーダーとは社長だけでなく、副社長だって、常務だって、専務、部長、課長、みんな組織のリーダーなのです。みんな、それぞれの立場でわからないながらに意思決定をしなければいけません。そして、そんな中で疲弊してしまっているのはすごくあります。

   では、どうしたらいいのでしょうか?今リーダーに一番必要な力、能力は何かといわれたらセルフアウェアネスという言葉がいわれています。自己認知力、自己認識力です。まずは自分のことをよく知ること。リーダーだからといって全部を知っているわけではないことを自分でも知って、要は自分が全部知らなければといって疲弊してしまうのではなくて、知らないことも弱みもきちんと知った上でそれを開示できる。

倉重:自分の強み、弱みを正しく理解するということですね。

豊田:あとは、例えば部下に対して、「倉重、これを頼むぞ」と仕事を依頼したとき、部下は「分かりました」と言うかもしれませんが、本当は彼はどうしたいのだろう、本当はどう思っているのだろうということも認知できること。そして自分たちを取り巻く状況を一歩引いて俯瞰(ふかん)して、鳥瞰(ちょうかん)して見ることができる、それもアウェアネスです。

 そうすると、自分の強み、弱みを知って、相手の強み、弱みを知る、グループ全体の皆の強み、弱みを知って、そして自分たちを取り巻く状況を見て、こちらだねといって、正しい意思決定につなげるためアウェアネスとなるのです。

倉重:やはりVUCAだから最終的に決定が正しいかどうかは分からないけれども、とはいえ正しい方向性を見つけるその前提となる土壌を作っておくということですね。

豊田:それを知らないと何かに、何が正しいのだろうということも自分で答えを探しに行ってしまったりするけれども、やはり少し一歩下がって見ることが重要なので、それがアウェアネスといわれていて、そのアウェアネスを高めるためにいいのは何だろう?というのが今度出てきて、グループとしてのアウェアネスを高める、あるいはグループの一人一人の強みを引き出すための手法としては、アプリシエイティブ・インクワイアリーとか、あるいはダイアログ、対話を通して強みを引き出すとか。

倉重:one on oneとか。

豊田:one on oneとかあるではないですか。やはりそういう手法を学んだり、あるいはリーダー自身が心と体のバランスを取るためにヨガがいいのですとか、あるいは心を平穏に、平安に保つためにはマインドフルネスがいいのだというのを学んでいくわけです。なぜなら全てはアウェアネスにつながる、そしてアウェアネスは意思決定につながる。意思決定こそがリーダーがやるべき仕事、そんな感じですかね。

(第3回へ続く)

【対談協力:豊田圭一】

株式会社スパイスアップ・ジャパン(代表取締役)

(経歴)

1969年埼玉県生まれ。幼少時の5年間をアルゼンチンで過ごす。

1992年、上智大学経済学部を卒業後、清水建設に入社。海外事業部での約3年間の勤務を経て、留学コンサルティング事業で起業。

約17年間、留学コンサルタントとして留学・海外インターンシップ事業に従事する他、SNS開発事業や国際通信事業でも起業。

2011年にスパイスアップ・ジャパンを立ち上げ、現在は東南アジアや南アジアなどでグローバル人材育成のための海外研修事業に従事。

その他、グループ会社を通じて、7ヶ国(インド、シンガポール、ベトナム、カンボジア、スリランカ、タイ、スペイン)でも様々な事業を運営している。

2018年、スペインの大学院 IE Universityでリーダーシップの修士号(Executive Master in Positive Leadership and Strategy)を取得。

【著書】

『とにかくすぐやる人の考え方・仕事のやり方』『引きずらない人は知っている、打たれ強くなる思考術』など全15冊

【その他】

レインボータウンFM "Go around the world"(ラジオパーソナリティ)

内閣府認証NPO留学協会(副理事長)

早稲田大学トランスナショナルHRM研究所(招聘研究員)

神田外語キャリアカレッジ(シニアアドバイザー)

Creww株式会社(顧問)

All About[留学/人材育成・社員教育](ガイド)

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒業後司法試験合格、オリック東京法律事務所、安西法律事務所を経てKKM法律事務所 第一東京弁護士会労働法制委員会外国法部会副部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)理事 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 労働審判等労働紛争案件対応、団体交渉、労災対応を得意分野とし、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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