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植田日銀総裁は年内の追加利上げの可能性を示唆、金融政策の正常化に向けてさらに一歩前進か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 日本銀行の植田和男総裁が朝日新聞の単独インタビューに応じ、物価上昇率2%目標の達成に向けた「確度」がさらに高まれば、追加利上げを検討する考えを示した。今後について「夏から秋にかけて春闘の結果が物価にも反映されていく中で、目標達成の可能性がどんどん高まっていく」と発言した(2024年4月5日 0時00分 朝日新聞)。

 追加利上げについてはもう少し時間をおいてから、市場との対話を進めるかとみていたが、意外に早いタイミングで行ってきたなとの印象を持った。

 私の個人的な予想では、7月と12月に0.25%ずつの利上げを行うのではとみていた。

 3月19日に総裁は普通の金融政策に戻したと指摘していた。たしかに異常な緩和策からは脱したが、正常化という表現は使わなかった。つまりまだ正常化には距離があることを示していたとみられ、その二歩目が利上げとなろう。

 賃上げは日銀の金融政策の目標にはない。それにもかかわらず、日銀が普通の金融政策に戻すにあたっての大義名分に賃上げを持ってきた以上は、ひとつの目標値となってしまうのは致し方ないかもしれない。しかし、あまりそれに縛られると、さらなる自由度を失うことも考えられる。

 これは国債の買入についても同様であり、6兆円という数字を出してしまったことで、4月からの国債発行額の減額に合わせた日銀の国債買入の調整を行わないという状況となってしまっている。

 今後、こちらは減額に向けて動くとは思うが、あまり慎重になり過ぎても市場は過度な日銀依存体質から抜け出せなくなるリスクもある。

 いずれにしても、今回の植田総裁の発言もあり、7月あたりでの0.25%の追加利上げの可能性は十分ありえるとみている。安倍派幹部が派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で離党するなどしたことも、日銀にとっては動き易くなる要因となろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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