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アクシデントが無い限り、19日にイールドカーブ・コントロールの撤廃含む金融政策の正常化決定への流れに

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 今後の日銀の動向を見る上で、先日の高田審議委員の講演とともに注目していたのが、7日の中川審議委員の講演内容だった。両者ともに執行部というか、キーマンといえる内田副総裁の考え方に近い人物と個人的に認識していたためである。

 中川審議委員の講演内容で最も注目すべきは、「日本銀行の金融政策運営」のところの最後の部分であろうか。

 『日本銀行は、様々な工夫を行いながら、緩和的な金融政策を継続しています。こうしたなかで、企業の賃金設定に対する姿勢に明確な変化の兆しがみられるなど、わが国の経済・物価情勢は、2%の「物価安定目標」の実現に向けて着実に歩を進めています。』

 わが国の経済・物価情勢は、2%の「物価安定目標」の実現に向けて着実に歩を進めているとの表現が踏み込んでいるとして注目された。また、様々な工夫を行いながらとあり、「工夫」という表現が使われているのもひとつのポイントか。

 『もちろん、わが国経済には、先ほど述べたようなリスクのほか、自然災害の発生など様々な不確実性が常に存在しますので、その時点での適切な政策運営のため、予断を持たずに情報収集を続けたうえで判断したいと考えています。』

 最近、千葉や茨城あたりでの地震が多く発生していたが、仮に首都直下型地震などが発生した場合には、解除を延期する可能性は当然ある。

 ちなみに、2000年の日銀によるゼロ金利解除の際には、7月の決定会合で実施しようとしたところ、7月12日に大手百貨店のそごうグループが経営破綻したことで、ゼロ金利解除が見送られたというケースがあった。8月にゼロ金利政策は解除された。

 『今後、仮に2%の「物価安定目標」が見通せる状況に至ったと判断され、金融政策を見直すことになった場合には、この間に導入された、イールドカーブ・コントロールのほか、リスク性資産の買入れなどの政策手段について、金融市場への影響とともに、これらが非伝統的なものであることも念頭におきながら議論が行われ、修正要否について判断することになると考えています。』

 やっと「非伝統的なものである」ことを示した。それらを正常なかたちに戻すというのであれば、マイナス金利解除は当然ながら、イールドカーブ・コントロールの完全撤廃、ETFやJ-REITの買入停止を含めたものが議論されると予想される。

 国債の買入については、ある程度の規模は残すとみられる。ただし、日銀の保有額があまりに巨額なだけに、償還債もそれなりに大きくなる。このため、結果として全体の保有額は今後は減少していくことも予想される。

 これについて時事通信が9日に下記のように報じていた。

 「新たな枠組みは、金利を直接操作する手法を撤廃し、国債購入額という「量」を対象とする方向で検討。買い入れ額は当面、現行の月間6兆円弱の規模を軸に調整する。」

 また、日本銀行では3月のマイナス金利解除に傾く政策委員が増えていると、ロイター通信が報じた。今年の賃金上昇加速が見込まれることが理由だと、こちらはブルームバーグの記事である。ロイターは、日銀の考えに詳しい関係者4人の話として、3月に動くか4月に動くかは政策委員会でまだ決まっていないと伝えた。

 「日銀の考えに詳しい関係者4人」が登場している。いわゆる事務方執行部関係者であろうか。政策委員会ではまだ意見が集約されていないということなのかもしれないが、どうも流れとしては3月19日に、マイナス金利解除のみならず、イールドカーブ・コントロールの撤廃も含む、正常化に動く可能性が高いように思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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