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日銀は3月19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除する、との見方が強まる

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)で市場事業本部長を務める関浩之執行役常務は、日本銀行が3月18~19日に開く金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除する可能性が高いとみていると、6日にブルームバーグが報じた。

 関氏は消費者物価指数の上昇率が前年比2%を超えて推移しているほか、今年の春闘では昨年を上回る賃上げが期待されると指摘した。

 日銀の物価目標の消費者物価指数(除く生鮮)が2%を超えてきたのは、2022年4月からで、直近発表された2024年1月まで続いている。

 3月15日に春季労使交渉(春闘)の1回目の集中回答結果が公表されるが、これである程度、賃上げの動向は確認できる。

 植田日銀総裁から、物価目標実現、見通せる状況に至らずとの発言があったが、3月15日に春季労使交渉(春闘)の1回目の集中回答結果をみてからという見方にも取れる。

 「日銀会合は4月にも開かれるが、足元の円安進行で今後は個人消費への悪影響が懸念される上、4月28日には衆議院補欠選挙もあり、勝敗次第で政権運営が不安定化するリスクを踏まえると、それに近いタイミングでの政策変更は極力回避した方が望ましいと関常務は言う」(6日付ブルームバーグ)

 私も正常化を決定するなら4月ではなく3月にすべきと考えているが、その理由は関氏が指摘していたような不確実性が4月では高まりかねないからである。

 以前の総裁会見でもあったが、展望レポート発表の有無と政策決定とは切り離して考えて良いと思う。

 昨年12月と今年1月の金融政策決定会合の状況が明らかに変化が生じている。それが12月の決定会合議事要旨と1月の主な意見からもうかがえる(1月決定会合の議事要旨の発表は3月25日)。

 オセロゲームでいえば、それまで黒一色にみえたものが、急に白一色に変わったかのようにみえた。これには執行部に近いとされる高田審議委員や中川審議委員が修正派に回ったためと私は読んでいた。

 その高田審議委員の先日の講演内容やその前に行われた、キーマンといえる内田副総裁の講演内容からも、次の一手が正常化であり、あとはそのタイミングという状況となっていたことがうかがえる。7日には中川審議委員の講演も予定されている。

 関氏はマイナス金利の解除とともに、当座預金は現在の三層構造を撤廃し、マイナス金利導入前のように超過準備金全てに付利0.1%を一律適用する1層構造への変更などがあり得ると指摘したが、これも同意である。

 一方、長期金利が今後跳ね上がるリスクに備える必要があり、日銀が長短金利操作を撤廃することは想定しにくいと関氏は分析。

 これについては、内田副総裁や高田氏の講演からは撤廃の可能性もみえたが、これまでの日銀の姿勢や政治も絡んで、撤廃そのものは難しいのではないかと私も考えていた。むろん撤廃が望ましいことは確かなのだが。

 政策金利も当座預金の付利金利から無担保コールレートオーバーナイト物へ変更されるとの指摘もあったが、これも正常化のひとつの象徴となりそうである。

 上場投資信託(ETF)の買い入れ政策については、最近の日銀幹部の発言を踏まえると、マイナス金利政策を終えると同時に新規の買い入れが停止される可能性が高いとの認識を関氏は示した。これも同意であるとともに、今後の売却の方法についても議論を開始すべきと考える。

 関氏の発言が報じられたことで、6日の債券先物が下落するなどの影響が出ていた。市場では4月に解除か、との意見が多いと言われているが、実際には3月ではとの見方が強まりつつあったなかで、その見方に関氏の発言が背中を押す格好となったものとみられる。

 6日の夕方に、こんどは時事通信が「少なくとも(政策委員の)1人がマイナス金利解除が適切だと主張」していると報じた。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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