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理解しづらい日銀の展望レポート・ハイライト

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 日銀は「展望レポート・ハイライト(2024年1月)」をサイトにアップした。

「展望レポート・ハイライト(2024年1月)」

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202401.htm

 展望レポートをわかりやすく図も使って説明しているものである。

 最初に「日本経済は緩やかな回復を続ける」とある。一番下にある政策委員の経済・物価見通しでも2023年度以降、やや低下基調とはなっているが1%台の成長率が継続すると予想しているようである。

 次の図は「物価のトレンドは2%目標に向けて徐々に高まる」というものである。

 2023年の消費者物価指数(除く生鮮食料品)の前年比は3.1%の上昇となっていた。ここには政府によるガソリン、灯油等に対する燃料油価格激変緩和措置の影響を除くとさらに上昇幅は高くなっていたはずである。

 いずれにしても物価のトレンドは2%目標に向けて徐々に高まるとの表現は正しくない。物価のトレンドはすでに日銀の物価目標である消費者物価指数(除く生鮮)の2%は大きく超えてきているというのが現状である。

 次の図は「日本経済・物価を巡る不確実性は高い」とあるが、不確実性が高くないときが果たしてあったであろうか。

 私は30年近く金融市場をみてきたが、常に不確実性が存在する。だからマーケットは動く。その不確実性に対応するために市場が存在するともいえる。そのなかの債券市場の機能を奪った日銀が、不確実性が高いとするのであれば、どうして不確実性に対応するシステムを持つ債券市場の機能を奪ったのか。

 最後の図が「強力な金融緩和を継続する」とある。これが最もわからない。非常時緩和を続けて何がしたいのか。

日本銀行は、粘り強く金融緩和を継続することで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していきます

 では聞きたい。日銀が強力な金融緩和を継続すれば、どういう波及効果によって賃金が上がるというのであろうか。どうして普通の緩和では良くないのか。いや、物価が上がっている以上、緩和策どころではないのではなかろうか。これらの図からは物価の番人の中央銀行の本来の姿は全く感じられないのであるが。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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