日本の長期金利に歴史的なトレンド変化が起きている可能性
生命保険大手の住友生命が、38年ぶりに個人年金の一部の利率を引き上げることを決めたそうである。日銀の政策で、日本の長期金利が上昇傾向になっていることが背景にあると日テレNEWSが伝えた。
住友生命が運用利回り(=予定利率)を引き上げるのは個人年金保険で、契約から受け取り開始までの期間が30年以上のもの。予定利率を引き上げるのは、1985年以来、38年ぶり(日テレNEWS)。
この記事をみたときの第一印象は、38年ぶりというのはおかしいだろう、これまで日本の長期金利は幾度と上げ下げしており、ここにきて38年ぶりに急上昇したわけではないはずと思った。
ただし私自身、これまで年金運用などに携わったことがなく、どのようにして個人年金の利率を決定しているのか細かいところは良くわからない。何かしらの決め事があり、それに引っかかったということであろう。ここで注意すべきは「38年ぶり」というところにあった。
38年前、つまり1985年以来ということになる。私が債券ディーラーになったのは1986年だが、1985年から債券市場の動向は追っていた。これは1985年が日本の債券市場にとってエポックメイキングとなった年であったためである。
この年、銀行の国債のフルディーリングが開始され、同年10月に長期国債先物が東京証券取引所に上場されたのである。つまり本格的に国債取引を主体とした日本の債券取引が開始された年であった。債券ディーリングの開始元年であった。
それまでも国債の取引はあったが、むしろ金融債などの取引のほうが盛んであり、国債を主体とする債券市場が本格形成されたのはこの年からといえる。
つまり38年ぶりというのは、日本の債券の本格的な売買が開始されてから、つまり日本の長期金利(10年国債の利回り)が本格的に市場で形成されてから初めてということになる。ということで38年間の日本の長期金利のチャートをあらためてみてみた。
38年前の長期金利は5%、6%が普通であった。これは1985年に上場した債券先物の標準物とされる利率が6%に設定されていることからもわかる。それが一時8%あたりに上昇した1990年あたりをピークに低下傾向となり、一時マイナスに沈んだ。この間、多少の上げ下げはあったが、トレンドとして方向感に大きな変化があったとみられることはなかったか。
それがここにきて、日銀の長期金利コントロールの修正などを受けて、長期金利のトレンドそのものが変化してきている可能性がある。今回の年金の利率引き上げもそれを示唆したものなのかもしれない。
私は1985年以降、38年間もの間、ディーラーや金融アナリストとして日本の債券市場をみてきた。もしかするといまは私にも経験のない、38年ぶりの歴史的な長期金利のトレンド変化が起きているということを示しているのかもしれない。