Yahoo!ニュース

20年国債の入札で生じた36年ぶりの結果の原因とは

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 17日の20年国債の入札において異変が起きた。この日の20年国債(利率1.1%、185回リオープン)の入札は、最低落札価格96円51銭、平均落札価格95円55銭となっていた。

 一瞬見たとき、テールと呼ばれる平均落札価格と最低落札価格の差は4銭かと思ったが、むろん良くみればそうでないことがわかる。

 96円51銭と95円55銭の価格差はなんと96銭もあったのである。テールは96銭と大きく流れ手元のデータによると1987年12月の1円02銭以来となった。20年国債の入札でテールが96銭などありえないとの先入観から見間違いを起こしていたのであった。

 このテールが何を示しているのか。

 最低落札価格と平均落札価格の価格差をテールと呼ぶ。テールが短ければ短いほど、人気が高いといえる。人気が高いと業者はなるべく落札したい。しかし、高値づかみも避けたいため最低落札価格と見られる価格に集中して応札し、テールが短めになる。

 一方、人気がない場合は、安いところまで札が入ることとなり、その安いところまで価格を下げないと全体の応札額に満たないとなれば、平均落札価格と最低落札価格の差が大きくなる。これまでのテールの長さに比べて大きくなった際には(テールが「流れる」とも表現される)、入札結果は悪いと判断される。

 まさに今回の入札結果は「悪い」と判断されるわけだが、問題は96銭という幅にもあった。

 手元に国債入札の集計表がある。これはエクセルファイルで入札の状況を毎回インプットしているものであり、20年国債についてはほぼ初回時からのデータがある。20年国債入札の公募発行が開始されたのが、1986年10月。やや記憶が曖昧だが、第1回から第3回まではコンベンショナル方式ではなくイールドダッチ方式で発行されていたかと思われる。

 第4回から現在のコンベンショナル方式となり、まだ入札そのものも不安定であったとみられ、第4回のテールは1円18銭、そして第5回のテールが1円02銭。その第5回の入札が1987年12月であり、96銭というのはそれ以来ということになり、極めて異例ともいえるテールの長さとなったのである。

 これは日銀が長期金利のレンジを1%に引き上げたことで、あらためて居所を探っているところでもあり、そこに米長期金利を主体に世界的な金利上昇が起きてきた。投資家も業者も20年国債の利回りの居所について明確な水準を見いだせなくなった。このため、テールが大きく流れたといえる。

 これは一時的で特殊なことであったといえるのか。

 日本の金利水準は日銀が無理矢理抑えていたことで、市場関係者も日銀の意向を重視するあまり、ファンダメンタルズとの乖離をあまり考慮することがなくなってしまっていた。

 しかし日本も物価が上昇し、金利がもつ本来の水準と日銀の意図する水準に明確に乖離が生じており、世界的な金利上昇も加わって、市場参加者もそれを無視できなくなりつつあるといえる。これを解決するには自然形成される金利に戻す必要があり、日銀は少なくとも金融政策の正常化を早期に行う必要があろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事