米国債の格下げで地合変化、日本の長期金利も上昇
格付け会社フィッチ・レーティングスは8月1日に、米国の外貨建て長期債格付けを最上位の「AAA」から「AAプラス」に1段階引き下げた。
世界でもっとも安全性が高いとされる米国債の格付けを最上位のいわゆる「トリプルエー」から1段階引き下げたのである。
米国債の格下げはフィッチが初めてではない。2011年8月6日、大手格付会社スタンダード・アンド・プアーズ(現S&Pグローバル)が米国の格付けを最上位から「ダブルAプラス」へ1段階引き下げていた。
これに対してフィッチ・レーティングスは米国の長期信用格付けはAAAを維持し、アウトルック(見通し)を安定的とし、ムーディーズ・インベスターズ・サービスも米国格付けは最上位に据え置いた。
フィッチは少なくとも1994年以来、米国の格付けを最上位で維持してきた。それにもかかわらず、どうしてこのタイミングで米国債の格付けを引き下げてきたのか。
フィッチは格下げについて、向こう3年間に予想される財政悪化に加え、一般政府債務が高水準で増加していることを反映したと説明。いやいや、これはいまに始まったことではない。現に、ムーディーズ・インベスターズ・サービスやS&Pグローバルは現状、動きをみせていない。
フィッチ・レーティングスの債務残高は膨張を続けているのはたしかである。法定上限の引き上げはその都度議会の承認が必要となる。引き上げに失敗すれば国債の元利払いができないデフォルト(債務不履行)に陥る。5月にはデフォルトが懸念される直前の時期まで交渉が難航したものの、6月には2025年1月まで上限を停止することで最終決着していたはずである。
フィッチは今年5月、米連邦政府の債務上限問題の紛糾を受けて、米国債の格付けを引き下げる方向で見直すと発表していた。タイミングからはそれを受けてということであろうが、米連邦政府の債務上限問題は目先は解消していた。
どうしてこのタイミングなのか。そして、どうしてその発表が米国市場が開いている時間でなかったのか。市場への影響を配慮してなのかもしれないが、それでも違和感がある。
ここにきて米国債の利回りが上昇基調に転じてきた、これは格下げがひとつのきっかけとなった。その後、米財務省が2日に8~10月の米国債の新規発行額を公表し、8月は2年債が30億ドル、10年債が前回5月の四半期定例入札と比べて30億ドル増えることで、これも嫌気された。
格下げが主因ではなかったかもしれないが、流れそのものを変えた可能性がある。そしてそれは日本の長期金利の上昇をさらに促すこととなった。