10年国債の利率が7年ぶりに引き下げられたのはどうしてなのか
7月4日に入札が実施された10年利付国債の利率が0.4%となり、前回の0.5%から0.1%引き下げられた。10年国債の利率が引き下げられたのは、日銀がマイナス金利政策導入後の2016年3月以来で、実に7年4か月ぶりの出来事となる。
4日に入札された10年国債は新発債となり、回号は371回債となった。大きな利回りの変動がない限りにおいて、1~3月、4~6月、7~9月、10~12月に発行される10年国債はそれぞれ同じ利率、同じ償還日となり、同じ回号となる。1月に新発債が発行され、2月と3月は同じ銘柄のリオープンとして発行される。
つまり7月からはあらたな10年国債が発行されることで、償還日が3か月先になるとともに利率が見直される。まさに今回がそうであり、実勢利回りをみて財務省が判断し、これまでの370回の0.5%から371回は0.4%になったのである。
それはさておき実勢利回りが低下して、0.1%引き下げられたのであれば問題はなさそうだが、腑に落ちないのである。
10年国債の利回りはいったい何によって決まるのか。もしこういった問題が出たならば、いまの正解となる回答は「日銀が決める」となろう。だからおかしなことが発生している。
国債の利回りに大きな影響を与えるものに物価がある。その物価はディマンドプルによるものに限るといったことはどの教科書にも掲載はされていない。物価は物価であり、日銀の物価目標は消費者物価指数(除く生鮮)の前年比であり、それは3%を超えている。
経済成長も影響を与えるが、こちらもマイナスではない。さらに海外の金利、なかでも米国の長期金利の影響を受けるが、こちらは4%台にまで上昇している。
このような状況下で、10年国債の利率が低下するというのは、どこかおかしい。
むろん、日銀が長期金利コントロールを行って、日本の10年国債利回りも0.5%という上限で抑えられており、その範囲内での上げ下げをしているうちに、需給バランスなどから利回りが低下し、つまり投資か需要の強まりなどで国債が買われ、その結果、10年国債の利率が下がったということではある。
それでもこの物価水準からみて、0.4%の利率は非常に奇異にみえるのもたしかである。物価は今後も高水準を維持してくることが予想され、それはコストプッシュによる影響からディマンドプルによる影響が大きくなりつつある。これは日銀短観などからもみえてこよう。
どうしてこのような10年国債の利率となってしまうのか。どこかこれはおかしくはないか。低金利が当たり前となっていた時代とはすでに様変わりしているが、それに我々の意識が追いついていないのか。長期金利はデジタルのように決定されているわけでなく、アナログ的な連続性を持っている。その結果、低金利の状況下でのさらなる利率の引き下げとなったともいえるが、この水準はおかしくみえる。