危機感なき日銀、嵐への備えも考慮せず
台風3号が日本に接近し温帯低気圧に変わったが、災害に備えた準備はあたりまえだが、台風が来てからでは遅い。天気が安定しているうちに備えをする必要がある。
15日から16日にかけて日銀の金融政策決定会合が開催される。4月9日に日銀総裁に植田氏が就任したが、4月28日の金融政策決定会合では金融政策の現状維持を決定した。総裁就任から時間もなく、内田副総裁が主導していたとみられることもあり、4月の会合での現状維持は予想通りではあった。
しかし、植田氏はイールドカーブコントロールの修正に着手するのではないかとの観測も強くあり、6月の決定会合で修正されるとの期待があった。
それに対して、一抹の不安を呼び込んだのが、4月の決定会合の公表文にあった「金融政策運営について、1年から1年半程度の時間をかけて、多角的にレビューを行うこととした」との表記である。
これについて、この期間中でも金融政策の変更はありうると、植田総裁は会見で述べていた。しかし、実際にはあと1年から1年半、現在の非常時向けの異次元緩和を継続するとの日銀の意向を示したものと私は感じた。
6月15、16日の金融政策決定会合でも長短金利を操作するイールドカーブコントロールを軸とした現行の金融緩和政策の継続を決める公算が大きい、複数の関係者への取材で分かったと10日にブルームバーグが報じた。
私もそんな気配を感じている。
債券市場関係者への調査などから、イールドカーブのゆがみの解消など市場機能に一定の改善が見られるとの回答も多かったが、これは欧米の長期金利の低下などを受けて、10年債利回りが0.5%以下でたまたま推移していたからにほかならない。
日本の物価の動向について、日銀は2023年度のコアCPIの前年比上昇率の1.8%を見込んでいるのに対して、物価の上振れを受けて民間エコノミストの予想は2.5%程度に上昇している。
賃金云々はさておき、物価が2%を超えて推移しているとなれば、本来の長期金利も2%を超えてきて何らおかしくはない。
欧米の中銀の利上げも、そろそろ打ち止めかとの観測もあるが、欧米の物価がピークアウトしたからといって、日本の物価も同様にピークアウトするという保証はない。
むしろ今後も2%を超える物価上昇が継続してくる可能性が高い。そこには賃金上昇による影響も加わろう。
何かをきっかけに、日本の長期金利に再び上昇圧力が掛かることも当然ある。あらたな台風の到来に対し日銀は、風が吹かないうちにイールドカーブコントロールを外しておけば、無理な指値オペなどせずに、柔軟かつ機動的な対応が可能となる。なぜそんなことも、いまの日銀はやろうとしないのであろうか。