米国でのデフォルトはありえるのか
米政府の債務上限を巡り、バイデン米政権と野党・共和党の協議が大詰めを迎えている。バイデン米大統領は26日午後、記者団に対して同日中に交渉がまとまる確証を得られるだろうと話した。合意案は固まりつつあるが、低所得層への支援を削るかでなお対立が続いている(27日付日本経済新聞)。
政府の資金繰りは6月1日にも行き詰まるとされていたが、イエレン財務長官は26日、その「Xデー」が6月5日になるという新たな試算を示した。少し時間的な余裕が生まれた分、ギリギリの交渉が続けられることが予想される。
大手格付け会社フィッチ・レーティングスは24日、米国の格付けは最上位「トリプルA」に据え置いたが、米国格付けの見通しを「ネガティブ」とし今後の状況次第で格下げがあり得るとした。
これまでも米政府の債務上限を巡っては、ぎりぎりの折衝が続けられる場面は何度もあったが、これによって米国がデフォルトとなったことはなかった。このため、もしデフォルトとなった場合には世界経済に多大な影響を与えかねず、当然、日本も巻き込まれるのではとの警戒もあろう。
ただし、仮に交渉がうまくいかず、米国がデフォルトとなったとしても、過去にアルゼンチンやロシア、スリランカで発生したようなデフォルトとはまったく状況が異なる。
米国はあくまで手続き上の問題にすぎない。民主党と共和党が、米政府の債務上限問題を使って、自らの政策を取り込ませようとしているだけである。仮にデフォルトとなり、一時的にせよ米国の社会経済に打撃を与えたならば、政治問題となりかねず、次回の大統領選挙にも大きな影響を与えかねない。
あくまで米国の民主党と共和党が、いわばチキンレースをやっているに過ぎず、何らかのアクシデントでもなければ、期限までに妥協する可能性が高いと言わざるを得ない。それでも万が一はあるが、これによって米国経済がクラッシュするといった事態も考えづらい。
国際通貨基金(IMF)は26日、米国に対して政府債務の上限引き上げを巡る交渉が「米国と世界経済の両方に(危機がシステム全体に波及する)システミックリスクをもたらす可能性がある」と警鐘を鳴らした。今後は予算の承認時に自動的に上限を引き上げる仕組みを設けるべきだと提唱した(27日付日本経済新聞)。
米国債の発行根拠法は、合衆国憲法(第1条第8項)に基づいて連邦議会が定めた第二自由公債法となる。同法において、国債残高に制限額を課して、その範囲内であれば自由に国債を発行し資金調達できるとされている。
IMFが提唱した仕組みを取り入れるには第二自由公債法の修正などが必要となりそうだが、それ以前に、これこそが米国の財政規律を守る仕組みでもあり、IMFの提唱については疑問を呈せざるを得ない。