米国の金融不安で資金がMMFに流入、もし日本で起きたら資金はどこに向かうのか
米国では3月にシリコンバレー銀行(SVB)とシグネチャー銀行が相次いで破綻し、金融不安が燻るなか、預金保険の上限額(25万ドル)に焦点が当たり、大口預金者がMMFになだれ込んでいる。
米MMFの残高は12日時点で5.28兆ドル(約700兆円)と1年前から7500億ドル(16%)増えた(17日付日本経済新聞電子版)。
MMFとはマネー・マネージメント・ファンド(Money Management Fund)の略称である。主要な投資対象を国債など国内外の公社債や譲渡性預金(CD)、コマーシャル・ペーパーなどの比較的安全性の高い短期金融資産とするオープン型の公社債投資信託である。
預金金利よりもMMFの運用利回りのほうが高いことも、資金シフトにつながった。FRBの急速な利上げにともない特に期間の短い公社債の利回りが急上昇し、MMFの運用利回りの上昇に繋がった。
欧州でも3月にクレディ・スイスへの不安が強まり、その結果、UBSがクレディ・スイスを買収した。その際にクレディ・スイスのAT1債が無価値になるなどした。
こういった金融不安が日本では絶対に起きないという保証はない。むしろ日銀による強力な金融緩和策がそのリスクを覆い隠している格好となり、潜在リスクは高まっている懸念は存在する。
もしも日本で同様の事態が発生した場合、たとえば銀行預金の流出先の受け皿とかはあるのか。大昔であれば、MMFと似たかたちの投資信託の「中期国債ファンド」などがあったが、いまは存在しない。
しかし、いまは安全性が高く、流動性リスクや価格変動リスクのない、ある商品が存在している。財務省が発行している個人向け国債である。
個人向け国債は金融機関から購入、金融機関へ売却とかになるが、金融機関はそれを保有できない(個人向けなので)。このため、金融機関は通すが、実際は財務省から購入しているかたちであり、たとえ購入先の金融機関が破綻しても、個人向け国債は保証される。
買い付け金額に特に上限はなく、利回りは預貯金金利よりも高い。1年間換金できない(一部例外はある)という条件付きではあるが、もし何かしらあった場合には、こちらに資金が流れ込むことが予想される。