黒田日銀の10年間の成果として、株高を挙げるのはおかしい理由
4月8日で日銀の黒田総裁の任期が終了となる。これに合わせて2013年4月に日銀総裁に黒田氏が就任してからの10年間を総括するような記事も出てきている。
黒田氏の10年間の功績として株価の上昇を挙げている人がいるが、これについては実はかなり疑問がある。
現実として2013年4月末の日経平均株価は13,860円86銭、それが2023年4月5日は27,813円26銭となっている。確かに倍以上の上昇となっており、この10年間で日経平均株価が大きく上昇したことはたしかである。
それではこの日経平均株価の上昇は、日銀の大胆な緩和策によってもたらされたものであろうか。
2012年末にアベノミクスと呼ばれた政策が打ち出され、それによって急速な円高修正と株価の上昇が引き起こされた。このため、アベノミクスが日本の株価を浮揚させたように解説されることがある。確かに株価上昇のきっかけとはなった。しかし、その原動力はほかのところにあった。
2012年に何があったかを思い出してほしい。そもそも株価が上昇していたのは日本だけではなく、欧米もそうであった。むしろ日本の株価の上昇のほうが遅れていたぐらいである。
これはギリシャの財政悪化をきっかけとした欧州の信用不安が、2012年に入り後退し、正常化が意識されてのものであった。
リスク回避による円高も起きており、その反動が生じ、アベノミクスをきっかけとして大きく動いたように見えたのである。例えアベノミクスがなかったとしても、円高修正は起こり、株価も上昇していたであろうことは容易に想像がつく。
これはこちらからも説明が付く。
2013年4月末に14,839.80となっていたある指標がある。これは2023年4月5日現在、33482.72となっている。これは他でもない米国株式市場の代表的な指標であるダウ平均株価である。こちらは2倍を大きく超える上昇となっている。こちらはすでに2012年あたりには上昇基調となっていた。
日本の株価に大きな影響を与えるものは何であろうか。
当然ながら日銀の金融政策によってのみ動くものではない。企業の足下の業績や先行きの見通しなどが総合されての日本という企業の価値を示すものではあるが、これに大きな影響を与えているものに米国株式市場の動向がある。日経平均の上げ下げの判断材料に米国株式市場は非常に大きな影響を与えることはご承知の通り。
ということで、もし日銀の異次元緩和が米国株式市場の上昇の大きな要因となっていたというのであれば、黒田日銀の成果としても良いかもしれないが、それはさすがに無理があろう。
とはいえ、日本の株価の上昇に対して、黒田日銀がまったく寄与していないとは言わない。ETFの大量買入も押し上げ要因となったと思うが、それもやや無理矢理感もあり、果たして功績といえるのかは甚だ疑問である。
念の為、円安も黒田日銀の成果との見方がある。昨年10月21日のニューヨーク時間にドル円は一時151円94銭まで上昇したが(円安ドル高)、まさにこれは物価や金利に上昇圧力が加わっても頑として動こうとしなかった黒田日銀の成果(?)と呼べるものであろう。