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仕組み債販売で地銀99行を調査、日銀の動向次第では市場が荒れて、仕組み債のリスクが顕在化する恐れも

久保田博幸金融アナリスト
(写真:西村尚己/アフロ)

 金融庁は地域銀行99行やグループの証券会社27社を対象に、仕組み債など金融商品の販売実態について一斉調査に乗り出した。経営陣が複雑で高リスクの仕組み債の問題を十分に検証せず、顧客に販売してきたことを問題視している(12日付日本経済新聞)。

 仕組み債がなぜ高格付け・高利回りを達成できるかというと、仕組み債に組み込まれたオプションなどのデリバティブにある。デリバティブに仕掛けられた時限装置が働かなければ、それなりに高い利子を享受できるが、何かがあった時には損失が桁違いに膨らむことがある。そのリスクを完全に理解するには、オプションなどへの理解とともにリスクに見合った条件設定なのかも見分ける必要があるが、これはプロですら、なかなか難しい判断となる。難しいだけでなく、大きな損失を被る危険性がある。

 仕組み債のリスクそのものが理解できれば問題ないが、このリスクを販売者が完全に理解していることも考えづらいものもある。それだけ仕組み債が複雑怪奇となっており、その分、制作サイドや販売サイドは手数料相当分を享受できる仕組みとなっている。

 購入者側としては、そのリスクはさておき、利回り水準が魅力であるため、つい購入してしまうこともあろう。しかし、その利回りの高さこそがリスクの高さを示しており、少なくとも個人はリスクが理解できないのであれば仕組み債を購入してはいけない。

 ただし、法人が購入する場合には、投資の配分先として債券での運用、しかも一定の利回り水準が必要で、仕組み債に投資せざるを得ないケースもあるかもしれない。しかし、これもハイリスクハイリターンの運用とならざるを得ない。

 金融庁と証券取引等監視委員会は苦情が相次ぐ「仕組み債」について、メガバンクや地域銀行、証券会社などの販売実態を総点検すると昨年8月に報じられており、実際に調査が入るようである。日銀の動向などによっては市場がさらに荒れるケースも想定され、仕組み債のリスクが顕在化してくる可能性もある。その調査結果にも注目したい。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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