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大阪市でキャッシュレス型商品券から紙の商品券に戻したところ応募が殺到、キャッシュレスは不評?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 大阪市が発行する「プレミアム付き商品券」に応募が殺到した。市はこれまでキャッシュレス決済を使った同様のキャンペーンを繰り返してきたが、利用が低迷。今回は紙の商品券を用意したところ想定以上の申し込みとなって急きょ追加発行を決める事態になった(5日付毎日新聞)。

 今回の大阪での商品券は1口1万円で購入でき、市内の商業施設やスーパーなどで1万3000円分の買い物ができる。新型コロナウイルスの感染拡大を受けての、自治体による景気対策の一環である。

 大阪市では2020年に繁華街・ミナミでキャッシュレス決済で代金を支払った買い物客に3000円を上限にポイントを還元するキャンペーンを行った。ところが、還元分として予算計上した2億2000万円のうち利用は6割にとどまった。

 2021年には市内全域に対象を拡大して利用促進を図ったが、確保した予算の約15%しか利用されず低調に終わった。いずれもキャッシュレス決済がネックとなったようである。

 都内などでも中野区や新宿区などでキャッシュレス還元を行っていた。新宿区では紙のプレミアム商品券が20%引に対し、キャッシュレス還元が25%引きとキャッシュレス還元の方がお得となっていた。これは紙のプレミアム商品券だと申し込み手続きや商品券の印刷などが必要で、事務費が掛かってしまうためである。

 しかし、大阪市の例をみてもキャッシュレスでは二の足を踏む消費者が多かったようである。高齢者から使いづらいとする意見が多く、さらに一部のキャッシュレス決済事業者に限ったために対応できない店舗が参加を見送ったことも大きい。使い勝手の良い、いわゆるチェーン店が適用除外になっていることも影響したものと思われる。

 これらの反省を踏まえ、今回は紙の商品券とキャッシュレス決済を併用した。商品券の場合、店側が二次元コードを読み込むだけで決済ができる。アナログな手法に転換したことが利便性の向上につながった一方で、前回に比べて運営には多額の費用がかさんだ。今回は申し込み手続きや商品券の印刷などが必要で、事務費は前回の4倍の13億2200万円となった(5日付毎日新聞)。

 高齢者などがネットが使えないため、キャッシュレスが不評というわけでもなさそうである。今回の「プレミアム付き商品券」の申し込みは、簡単だとはいうが、公式ホームページに氏名や住所などを入力する必要がある。

 大阪市によると、9月16日の申し込み開始から2日の締め切りまでに、予定した176万口(約229億円分)を大幅に上回る約295万口の応募があった。当初予定していた抽選を取りやめて申込者全員分を追加発行する(5日付毎日新聞)。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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