Yahoo!ニュース

トルコの物価急騰の要因は利上げは考えないという異例の金融政策にあり

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 トルコ統計局は3日、7月の消費者物価指数(CPI)上昇率が前年同月比79.6%だったと発表した。物価上昇率は6月の78.6%から加速し、1998年9月以来の高水準となった。

 食品や交通費、家賃など生活関連の物価高騰が市民生活を圧迫する。募る国民の不満は、インフレ鎮静化に有効な手立てを打てていないエルドアン政権に向かう(4日付日本経済新聞)。

 トルコのエルドアン大統領はいまだに「金利が下がればインフレ率も下がる」と逆の主張を続けている。このため、トルコ中央銀行はこれだけの物価高にもかかわらず、利上げが出来ない状態にある。  

 エルドアン大統領はこれまで、自らの意向に沿わないトルコ中央銀行総裁を解任してきた。現在のトルコ中銀ができるのは利下げか現状維持かとなっている。

 これを受けて通貨リラは下落し、対ドルで1年前の半値以下にある。通貨安もさらなる物価上昇を招く格好となっている。

 日本経済新聞によると民間の学者らでつくるENAグループは7月のCPI上昇率を175.6%と発表するなど、インフレ実態は公式統計より悪いとの見方すらあるとか。

 トルコの問題の根っこには異例の金融政策がある。本来であれば、このトルコを反面教師にすべきところではある。しかし、似たような政策を行っているのが我が国の中央銀行であることにも注意する必要がある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事