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2月の企業物価は前年比9.3%と歴史的な高騰、今後はロシアのウクライナ侵攻も加わりさらに上昇も

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 日銀が10日に発表した2月の国内企業物価指数は、前年同月比9.3%もの上昇となった。オイルショックが影響していた1980年12月の10.4%以来の歴史的な高騰となる。前年を上回るのは12か月連続。1月の伸び率は速報値の8.6%から8.9%に上方修正された。

 品目別にみると石油・石炭製品や木材・木製品などが上昇した。木材・木製品の上昇率は前年同月比で58%、石油・石炭製品は34.2%と大幅な伸びが続いている。

 原油先物価格は3月以降にさらに上げ幅を拡大している。このため今後さらに物価の上昇圧力が掛かることになる。電力料金などへの輸入燃料価格による影響は4月以降に表れることになり、3月以降の企業物価は二桁の伸びとなる可能性もある。

 ウッドショックと呼ばれた木材価格の上昇も無視できない。米国では新型コロナウイルスの感染拡大によるテレワークの浸透と住宅ローンの歴史的低金利を背景に住宅着工戸数が急増したことなどから木材価格は高止まりしている。

 日本国内では輸入木材の代替需要が増し、国産材価格も急上昇していた。これが今回の木材・木製品の上昇率にも反映されている。

 そして農林水産省は9日、輸入小麦を2022年4~9月に民間へ売り渡す価格について、主要5銘柄の平均で1トン当たり7万2530円にすると発表した。前期(21年10月~22年3月)より17・3%引き上げ、金額は過去2番目の高さとなる。

 これによる食料品価格などへの影響も大きいとみられる。小麦粉の価格に転嫁されると、パンや麺類などさまざまな食品の一層の値上げを招くこととなる。

 国内の物価上昇の要因として円安もある。ここにきてドル円はやや頭打ちとなっていたが、10日には一時116円台をつけてきた。10日に発表される2月の米消費者物価指数も大きく上昇すると見込まれ、FOMCでの利上げも確実視されている。それに対して日銀がすぐに動くことは予想しづらく、金利差などから円安が進みやすい状況にある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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