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イングランド銀行は連続利上げ、ECBも年内利上げの可能性

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 イングランド銀行は3日の金融政策委員会(MPC)にて、政策金利を0.25%引き上げ0.5%とした。MPCメンバー9人のうち4人は0.5%の利上げを主張した。

 保有資産について縮小を開始することも発表した。過去10年の量的緩和の下で積み上げた8950億ポンド(約140兆円)の保有国債の満期償還金の再投資を直ちに停止する。2025年までに2000億ポンド余りの圧縮につながる。200億ポンド規模の社債は2023年末までに全額放出するとしている。

 欧州中央銀行(ECB)は3日の政策委員会で主要政策金利を予想通り据え置いた。政策委員会は2022年を通じて債券購入を減らし、資産購入を完全に終了させた後に利上げをすると表明した。

 ただし、ラガルド総裁は理事会後の記者会見で「インフレは高止まりし、予想以上に長期化する公算が大きいが、今年を通じ鈍化する」と予想。その上で「昨年12月時点のECBの予測と比較すると、とりわけ短期的にはインフレ見通しに対するリスクは上向きに傾いている」という認識を示し、「明らかに状況は変化した」と述べた(3日付ロイター)。

 これまで繰り返していたラガルド総裁による、年内利上げの可能性は低いとの発言はなく、これを受けてECBの年内利上げの可能性が高まってきた。

 欧州連合(EU)統計局が2日発表した1月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値は、前年比上昇率が5.1%となり、過去最大だった昨年12月の5%を上回った。4.4%に鈍化すると見込まれていたが、予想外の記録更新となった。

 ECBが注目する食品とエネルギーを除いたインフレ率は2.7%から2.5%に鈍化したものの、依然としてECBの目標の2%を上回っている。

 ユーロ圏消費者物価指数の記録更新はエネルギー価格が28.6%の大幅な上昇となったためである。緊張が続くウクライナ情勢次第では、物価全体を押し上げている原油や天然ガスの価格高騰に拍車がかかりかねないという懸念もある。

 ECB理事会では、利上げというよりもまずは「正常化」の可能性を探る格好となったとみられる。マイナス金利政策や量的緩和は、やや次元の変わった金融政策であり、それを本来の金融政策に戻した上で、さらなる利上げも視野にいれつつある。

 イングランド銀行も正常化に向けた動きを加速させてきた。FRBも3月から利上げを開始するとみられる。それに対して日銀は動かないのか。それとも動けないのか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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