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LINE Payでのトラブル発生から見た、モバイル決済のウイークポイント

久保田博幸金融アナリスト
(写真:當舎慎悟/アフロ)

 LINE傘下でスマートフォン決済大手のLINE Pay(東京・品川)は6日、約13万3千件の決済の関連情報が漏洩し、インターネット上で閲覧できる状態になっていたと発表した。ポイントに関する調査を実施した際に、決済関連情報をソフトウエア開発者向けサイト「ギットハブ」にアップロードしてしまったと説明している(7日付日本経済新聞)。

 漏洩した情報のなかには、利用者の名前や住所、電話番号、クレジットカード番号は含まれていないとしており、現時点で情報漏洩の被害は確認されていないという。ただし、決済の日時や金額のほか、ユーザーと加盟店の識別情報が含まれており、LINEペイは、外部に漏洩した情報を解析すると、利用者の名前などの情報を取得できる可能性もあるとしている。

 LINE Payを巡っては11月に二重決済トラブルなどが起きていた。11月27日にLINE Payは利用者の一部で支払いが二重に発生するトラブルが起きたと明らかにした。LINEとJCBが発行したプリペイドカードでチャージした利用者の一部でトラブルが起きた。

 日本のキャッシュレス化の切り札ともされていたQRコードを使ったモバイル決済であるが、Payがつく決済が乱立し、その利用は若者を中心に確かに拡大した。しかし、これによって日本のキャッシュレス決済が急速に進んだというわけでもない。

 QRコードを使ったモバイル決済については、現金を持ち歩く必要がなく、ポイントも付くなどの利点がある。しかし、利用可能店舗は増えているようだが、どこでも使えるわけでもない。

 モバイル決済についてはネットを使っていることでいくつかのウイークポイントが存在する。そのひとつが今回のような情報漏洩や決済トラブルなどである。むろんこれはモバイル決済に限らず、銀行などでのネットでの利用時にもその懸念は存在しうる。

 ただし、QRコードを使ったモバイル決済については、セブン・ペイの不正利用事件などもあり、大手金融機関のネット決済などと比較してそれほど信用度が高いとは言いづらい面もある。

 また、すべてをQRコードを使ったモバイル決済で済まそうとすると利用できる店舗が限られるだけでなく、ネット接続そのもののトラブルや、今回のような決済業者のシステムのトラブル、さらには災害などによる停電時に利用できないなどのウイークポイントが存在する。そういったリスク回避のために一定額の現金を持つ必要もある。

 ネット社会となって金融決済もネット化され、小口決済のキャッシュレス化もニーズはあろう。しかし、小口決済については手数料の問題があるとともに、今回のようなシステム上の問題も起こりうる。特に日本では現金という決済のインフラの整備が行き届いていることで、それを凌駕することは非常に難しいと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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