テスラへの世紀の空売りは失敗か、マイケル・バーリ氏はテスラの空売りを解消
マイケル・ルイス氏のベストセラー「世紀の空売り」(原題:ザ・ビッグ・ショート)で有名な投資家、マイケル・バーリ氏が最大のショートポジションの一部を少なくとも一時的に解消した可能性があると16日にブルームバーグが報じた。
閉じたとされるショートポジションには、キャシー・ウッド氏率いるアーク・インベストメント・マネジメントの最大ファンドであるアーク・イノベーションETFや、イーロン・マスク氏のテスラ、最大の米国債ETFであるiシェアーズ米国債20年超ETFが含まれるとされる。
マイケル・ルイス氏のベストセラー「世紀の空売り」では、バーリ氏が2007~2009年の金融危機の際にサブプライムローンを空売りし、大もうけしたことが記されていた。つまり空売り界の帝王といったところだが、今回はその空売りに失敗したようである。
アーク・イノベーションETFや米国債20年超ETFについては価格は低迷しており、バーリ氏がプットオプションを買ったタイミングは不明ながら、それほどの損失を出したとは考えづらい。今回のポジション調整の主因はテスラにあった。
米10年債利回りは10月21日に1.7%まで上昇したが、その後低下基調となり、9日には米10年債利回りは1.41%に低下した。この背景にあったのは欧米の主要中銀が利上げに慎重姿勢を示したことにある。長期金利の低下も手伝い、テスラやビットコインなどの価格を押し上げ、それぞれ過去最高値を更新していた。
このテスラの株価を押し上げた要因のひとつが、マイケル・バーリ氏によるプットオプションの解消、つまり世紀の空売りのショートカバーであった可能性がある。
そのショートカバーが一巡し、そこにイーロン・マスク氏が保有株の売却を行ったことで、その後のテスラの株価の下落が加速した。
テスラの株価がコロナ禍にあっての金融緩和による流動性相場におけるバブルの象徴的な存在であったと思う。それを空売りするというのは理にかなっていたはずであった。しかし、今回のバブルはいったん弾けたようにみせて再度復活していた。マイケル・バーリ氏にとって想定外の事態が起きたといえたのではなかろうか。
世紀の空売りのバーリ氏も撤退したとなれば、バブル相場の再燃によって市場のセンチメントは総強気になったとの見方もある。しかし、それはそれでバブル崩壊のリスクを高めることになりかねない。
さらに欧米の中央銀行はいったん進めるかに見えた利上げを躊躇しつつある。物価の高騰は一時的との見方もあり、コロナ禍の先行きも見通せないなどの理由はあるのかもしれないが、結果としてこれがバブルを助長するようなことにならなければ良いと思うのだが。