どうしてジャクソンホールが注目されるのか
米国ワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムは市場参加者にとり大きな注目材料となっている。
今年は当初、8月26~28日に対面方式を交えて開くとしていた。しかし、新型コロナウイルスの感染が再拡大し、健康上のリスクが高まっていると判断した結果、今年の会合をオンライン方式に切り替え、日程を27日に限ると発表した。これにより、2020年から2年連続でオンライン開催となる。
注目されるFRBのパウエル議長の講演は米時間の27日午前に予定されている。このタイミングでテーパリングの何かしらの示唆があるのではとの観測も出ている。
実際にこれまでジャクソンホールが金融政策の変更点のきっかけになったケースも多い。それではどうしてジャクソンホールがこれほどまでに注目を集めているのか。
ジャクソンホール (Jackson Hole) とはワイオミング州北西部に位置する谷のことを意味する。これには著名学者などとともに、日銀の黒田総裁など各国の中央銀行首脳が多数出席することで、金融関係者によるダボス会議のようなものとなっている。
このようなシンポジウムが、どうしてワイオミング州ジャクソンホールという小さな街で行なわれるかといえば、FRB議長だったポール・ボルカー氏がフライ・フィッシングの趣味があり、この街が良く訪れていたお気に入りの場所であったからという説がある。
ロシア危機とヘッジファンド危機に見舞われた1998年に、当時のグリーンスパンFRB議長がこのカンザスシティ連銀主催のシンポジウムの合間に FRB理事や地区連銀総裁とひそかに接触し、その後の利下げの流れを作ったとされている。
1999年には日銀の山口副総裁(当時)と、バーナンキ・プリンストン大学教授(当時、のちのFRB議長)が、日本のバブルに対する日銀の金融政策の評価をめぐり、論争を行ったことでも知られる。
2010年8月27日にはバーナンキ議長(当時)がQE2を示唆する講演をジャクソンホールで行った。このシンポジウムに出席していた白川日銀総裁(当時)は予定を1日に早めて急遽帰国し、8月30日の9時から臨時の金融政策決定会合を開催し、新型オペの拡充策を決定している。
2013年8月末にワイオミング州ジャクソンホールで開催されたカンザスシティ連銀主催のシンポジウムにバーナンキ議長は異例とも言える欠席となった。9月17日から18日にかけて開催されたFOMCでは予想されたテーパリングを見送った。
2014年8月22日のジャクソンホール会議でECBのドラギ総裁は、ユーロ圏のインフレ期待が「大幅な低下を示した」と発言した。この発言は講演原稿にはなく同総裁の「アドリブ」であった。さらに政策姿勢を一段と調整する用意があるとした講演原稿の中でも「必要になった場合は」の文言が省かれていた。つまりこれらはドラギ総裁が資産購入プログラムの導入を示唆したとされた。その後、9月4日のECB政策理事会では現状維持との大方の市場参加者の予想に反して、利下げとともに、10月からの資産買入れを決定した。
ということで果たして今年のジャクソンホールでは金融政策の変更を意味するテーパリングへの具体的な示唆があるのか。27日のパウエル議長の講演に注目が集まる。