エルサルバドルがビットコインを法定通貨にすることに対し、早速、IMFが懸念を示す。融資に影響も
中米エルサルバドルの議会は8日、代表的な暗号資産(仮想通貨)のビットコインを法定通貨にする法案を賛成多数で可決した。ビットコインの法定通貨の採用は世界で初となる(9日付日経新聞電子版)。
エルサルバドルの面積は21040平方キロメートルと九州の約半分。人口は約664万人。GDP成長率は改善しつつあるが、中米地域でも低いレベルにとどまっている。約250万人といわれる在米エルサルバドル人による家族送金は約59.18億ドル(2020年)にのぼり、GDPの23%に相当し、エルサルバドル経済の下支えとなっている(外務省のサイトより)。
中南米地域の最貧国の一つである同国は財政が逼迫し、2001年以降は米ドルを正式な通貨としている。
ブケレ大統領によるとエルサルバドル国民の約7割は銀行口座を持っておらず、在米エルサルバドル人による家族送金が経済の下支えとなっている面もあって、送金が容易なビットコインの活用も意識されたものとみられる。
すべての経済主体はビットコインでの支払いを受け入れる必要があるものの、ビットコイン決済に対応できない場合は免除するそうである。
法定通貨とは金銭債務の弁済手段として用いることができるよう法的効力を持たせた通貨のことで、一般に納税に使える通貨を指すとある。
日本の資金決済法では仮想通貨の定義として「本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建て資産を除く」と明記されている。もしエルサルバドルがビットコインを法定通貨として認めた場合はこの定義に抵触し、法改正や政令、解釈の変更を含めた対応が必要となる可能性がある(8日付日経新聞)。
南米諸国でも追随するような動きも出ているようだが、今回のエルサルバドルのビットコインの法定通貨の採用はひとつの実験ともなろう。
そもそも発行体やそれを裏付けるもののない暗号資産(仮想通貨)が、通貨として成り立つのか。価格の変動が大きく、通貨としての利用はむしろ困難な状況で、単に送金が容易で費用負担が少ないというだけで、果たして利用が可能なのか。
国際通貨基金(IMF)は10日、中米エルサルバドルが世界で初めて暗号資産(仮想通貨)ビットコインの法定通貨採用を承認したことについて、経済・法律面で多くの懸念があると発表した。IMFのライス報道官は定例会見で「ビットコインの法定通貨採用は、マクロ経済、金融、法律上の多くの問題を提起し、非常に慎重な分析を必要とする」と指摘した。(10日付ロイター)。
これはある意味、当然のことであろう。エルサルバドルはIMFから10億ドル以上の融資獲得を目指しているそうだが、この融資にも影響が出てくる懸念も出てきた。IMFは10日にエルサルバドルのブケレ大統領と会談し、ビットコインの法定通貨採用に関する法律について協議する。