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仮想通貨の保証はないが自由さか、既存通貨の規制はあるが安定性か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 ビットコインの価格が揺れ動いている。これだけ価格が変動するものに「通貨」としての役割は求められない。投機資産といった位置付けとなろう。それでも金融機関の専門家を含めて、暗号資産(仮想通貨)に飛びつく人が多いのは何故だろう。

 ビットコインなどの仮想通貨が生まれたのは、グローバルに成長したITテクノロジーが根幹にある。インターネットが普及し、誰もがスマホというかたちのコンピュータを所有し、これを使った金融取引が行われた。そこでネットのなかで通用する「通貨」を作ろうとしてできたのが仮想通貨である。

 この仮想通貨は既存の通貨と違い、規制に縛られない自由さが最大の特徴である。送金の手軽さや手数料の低さなども期待され、規制を嫌う人たちに大きな支持を得たものと思われる。Facebookのリブラ構想もその一環であった。

 ただし、規制に縛られない自由さの裏返しとして、何かあったときは誰も守ってくれないという欠点が存在する。既存の通貨はいろいろと規制があるものの、その価値は中央銀行などが保証している。

 日本の場合、日本銀行法第46条第2項で、「日本銀行が発行する銀行券は、法貨として無制限に通用する」として、銀行券に無制限の強制通用力があることが定められている。

 これに対して、仮想通貨については何らかの法律によって守られているわけではない。また、裏付け資産があるわけでもない。

 既存通貨については、全国津々浦々で通用するような仕組みが出来ている。特に日本では中央銀行の日銀を中心として、金融機関と巨大なネットワークが構築され、これがインフラとなっている。

 日銀の支店があちらこちらにあるのは、自然災害時を想定してのものであった。つまりいついかなるときも通貨が使える仕組みが整えられている。

 さらに民間企業である銀行などの金融機関に預けている預金も一定額は保証される仕組みも整えられている。

 これに対して、仮想通貨については規制がない分、新規参入するのも容易であり、盗難などがあった際の補償といった制度も整えられてはいない。また、規制がない分、犯罪にも利用されやすい側面もある。

 通貨制度の歴史も、ある意味、人類の経済史とともにあった。時代によって通貨制度も変わりうる。このため、仮想通貨を全面否定するつもりはない。中央銀行デジタル通貨の研究や実証実験も進んでいるように、電子通貨は今後普及してくる可能性はある。

 しかし、あらたな通貨制度が確立する前には混乱が起きていた事も多い。中央銀行を中心とした管理通貨制度は歴史を経て作られたものである。現在の通貨制度は、まだまだ不便な面も当然あり、ベストな制度ではないかもしれない。しかし、現状ではまだましな制度であることも確かではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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