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日銀は長期金利変動幅を小幅拡大かとの観測記事で債券は一時下落し、円高、株安に。なぜこのタイミングで?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:cap10hk/イメージマート)

 日本経済新聞(電子版)は、18日の12時に、「日銀は18日午後から19日まで開く金融政策決定会合で、金融緩和策の一段の長期化を見据えた政策修正を議論する。長期金利の誘導策は変動を認める幅を現状より若干広げ、プラスマイナス0.25%程度とする方向」と報じた。

 この記事はあくまで観測記事のようではあるが、日銀の意向を反映したものである可能性も高い。それというのも、2日間にわたる決定会合がまさに始まったばかりであり、決定会合期間中にこのような記事が出るのは極めて異例であるためである(過去になかったわけではないが)。

 もしこれが日銀側から出たものとして、何故、このタイミングなのか。すべては憶測にはなってしまうが、事前に日経新聞という市場に大きな影響力を持つ媒体を通じて、市場の反応をみたかったのかもしれない。

 この記事が出ると債券先物は151円25銭から150円85銭まで下げた。ただし、それでも40銭値幅に過ぎない。もちろん観測記事のため疑心暗鬼の売りであったこともあるが、プラスマイナス0.25%程度への拡大もそれほどサプライズではなかったようにもみえる。

 外為市場では、日本の長期金利の上昇を意識してか、ドル円は109円近くから108円60銭近くに下落した(円高になった)。しかし、米長期金利の居所を考えると日本の長期金利の0.25%程度までの上昇などたいしたことはなく、すぐに戻り109円近くに戻した。

 日経平均も一時3万円割れとなっていたが、こちらも下げ幅は限定的。

 もし市場動向を確認したかったのであれば、長期金利の誘導策をプラスマイナス0.25%程度としても問題はなさそう。たぶん0.30%程度でも問題はないと思われる。

 0.30%ではなく0.25%にしたのはどうしてなのか。黒田総裁と雨宮副総裁にやや意見に違いがみられたが、それはどうなったのか。

 いずれにしても明日の決定会合の結果を確認する必要がある。まさかとは思うが、イングランド銀行の元総裁のキング氏のように、総裁が反対票を投じるということは、コンセンサスを重視する日銀では起こらないと思うのだが。

 ちなみに長期金利の具体的レンジは決定会合で決めることはなく、変動幅のさらなる拡大もありうるといった表現とし、総裁会見で具体的なレンジを公表するというのが、前回のパターンであった。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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