米国はイエレン財務長官となって何が変わるのか
バイデン前副大統領は、政権発足に向けて、経済政策を担う閣僚らの人事を発表した。経済・財政政策の要となる財務長官には、前FRB議長のジャネット・イエレン氏を指名するとした。
イエレン氏はカリフォルニア大学バークレー校のハース・ビジネススクールの教授から、 ビル・クリントンの大統領の経済諮問委員会の委員長などを歴任。2004年にサンフランシスコ連邦準備銀行の総裁、2010年にFRBの副議長、そして2014年に議長に就任した。2018年に議長として任期満了となったが、二期目の指名はトランプ大統領の不満の矛先ともなったことでされなかった。
イエレン氏は学者出身であり、政治家としての経験はなかったものの、クリントン大統領時代には経済諮問委員会の委員長を務めている。ここで米国の経済界や政界にとどまらず国際的に広く人脈を築いてきたとされる。
もちろんFRB議長として、G7と呼ばれる財務大臣・中央銀行総裁会議などにも出席しており、各国の財務省や中央銀行関係者の知人も多いはずである。
麻生太郎財務相はイエレン氏の人物像について「きわめて常識的な人」と語っていた。併せて麻生財務相は「発言もしっかりしているし、能力も高いと思う」と述べ、同氏を評価する考えを示した。日本政府関係者の間でもイエレン氏とは「旧知の仲」と好感する声が多かったようである。
今回の正式な指名発表を受けて、クリスティーヌ・ラガルドECB総裁(前IMF専務理事)もツイッターで、友人のジャネット・イエレンが米国の財務長官に指名されたことを祝福します。私たちが直面している世界経済の課題に、共に取り組むことを楽しみにしていますとコメントしていた。
イエレン氏の74歳という年齢は気になるが、財務長官となれば、これまで積み重ねてきた経験が生かせるものと思われる。とはいえ問題がないわけではない。まずはこじれている中国との関係をどうするのか。
中国が環太平洋連携協定(TPP)への参加意欲を表明したことで、米国はどう対応してくるのかが注目されている。トランプ政権とは異なり、バイデン政権は強圧的な態度を示すことはないにしろ、中国との覇権争うは今後も続くことで、その対応にあたる一人であるイエレン財務長官の手腕が試されることになる。
そして、もうひとつ気掛かりなのは米国の債務残高の膨張である。イエレン氏がFRB議長時代に他の中央銀行に先駆けて、行き過ぎた金融政策から正常化に舵を切っていた。今後、イエレン氏はコロナ後を見据えて、膨張した政府債務の問題についても取り組む必要がいずれ出てくるものと思われる。