日銀は景気や物価の見通しを下方修正
日銀は29日の金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定した。事前の予想も現状維持が多かったことで、特に材料視されることはなかった。
発表された経済・物価情勢の展望(展望レポート)によると、「日本経済の先行きを展望すると、経済活動が再開し、新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、改善基調を辿るとみられるが、感染症への警戒感が残るなかで、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。」とあった。
現状では欧米で新型ウイルスの感染が再拡大しており、欧州の一部では部分的なロックダウンが再び実施される。日本での感染は拡大とまではいわないが、収縮するような気配もいまのところはなく、新型コロナウイルス感染症の影響は今後も残らざるを得ないと考えられる。
物価については「先行きの物価を展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、感染症や既往の原油価格下落、Go Toトラベル事業の影響などを受けて、マイナスで推移するとみられる。」とあった。
「Go Toトラベル」事業の影響はかなり大きいようで、30日に発表された10月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年比0.5%低下と、2016年12月以来の落ち込みとなったが、「Go Toトラベル」事業の影響を除いた消費者物価指数(生鮮食品を除く)の試算値は前年比0.1%の上昇となっていた(30日付ブルームバーグ)。
物価指数については、一時的な影響となる「Go Toトラベル」事業の影響を除いてみる必要はあるが、それでもゼロ%近傍にとどまっていることも確かである。
ここにきて欧米の新型ウイルスの感染が再拡大を受けた行動規制などにより、景気の先行きの不透明感が強まり、原油先物価格が再び40ドルを割り込んでいることも気になる。原油価格の動向は消費者物価指数(生鮮食品を除く)に直接影響を与える。
政策委員の大勢見通しによると2020年度の実質GDPの見通し(中央値)は、7月時点の見通しのマイナス4.7%から今回はマイナス5.5%に下方修正された。また、消費者物価指数(除く生鮮食品)もマイナス0.5%からマイナス0.6%にやはり下方修正された。