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欧米で新型コロナウイルスの感染が再拡大、金融市場ではこれがあらためてリスク要因に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 世界保健機関(WHO)のマーガレット・ハリス報道官は、欧州で新型コロナウイルスの1日あたりの死者数が、前の週より40%近く増加していると明らかにした。ハリス氏によると1日あたりの新規感染者数は前の週と比べて3分の1増加。その大半をフランス、スペイン、イギリス、オランダ、ロシアの5か国が占めているという(28日付BBC)。

 この感染拡大を受けて、ドイツのメルケル首相は28日、11月2日から1か月間、緊急の部分的なロックダウン(都市封鎖)措置を実施すると発表した。

 フランスのマクロン大統領も28日に、少なくとも30日から12月1日まで全土で外出を制限すると発表した。フランスでは3~5月に厳しい外出制限を実施したことで、いったん感染拡大を抑えた。だが夏休みの人の移動で再び広がった。

 米国でも過去1週間のコロナ新規感染者数が27日に7万1832人と過去最多となった。中西部を中心に感染や入院患者数が増え、イリノイ州はシカゴ市でのレストランの店内飲食を禁止した(29日付日経新聞電子版)

 スペインかぜ(スペインインフルエンザ)も1918年から1919年にかけて第1波から第3波まで3回の感染拡大が起きたとされている。このため、さらなる感染拡大の可能性は当然指摘されていたが、ここにきての欧米での新型コロナウイルスの感染の再拡大は想定以上であったように思われる。

 ドイツやフランスでの部分的なロックダウンの発表もあり、28日の欧州株式市場は大きく下落し、ドイツのクセトラDAX指数は約5か月ぶりの安値を付けた。

 英国でも新たなロックダウン(都市封鎖)を導入する可能性が高まっているとして、ロンドン株式市場では、FTSE100種が6か月ぶりの安値を付けてきた。

 11月3日の米大統領選挙の行方と、その結果を受けての米国の新型コロナウイルス対策としての追加の経済政策の行方、さらに英国とEUの交渉の行方などが、市場では材料視されていたが、ここにきて欧米の新型コロナウイルスの再度の感染拡大があらためて材料視されてきた。

 日本では欧米ほどには、新型コロナウイルスの感染が再拡大しているわけではない。しかし、欧米のリスクの増加によって外為市場では必然的に円が買われる図式となり、ドル円は節目とされる104円に接近している。

 東京株式市場は欧米の株式市場に比べて下げ幅はそれほど大きくはない。しかし、ドル円と同様に、チャート上からはここで下に抜けるとあらためて調整局面入りしてくる可能性がある。テクニカル的な売りが入りやすくなりそうなので注意が必要か。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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