ソーシャルボンドとなる欧州共同債が人気
欧州連合(EU)は、新型コロナウイルス支援措置の一つの失業リスク緩和緊急支援(SURE)の財源調達に向けた第1弾の債券発行手続きを開始した。発行額は170億ユーロとなる(20日付ロイター)。
これは欧州連合(EU)が初めて発行するソーシャルボンドとなる。ソーシャルボンドとは社会的な課題解決に資するプロジェクト・事業のための資金調達手段である。
欧州連合(EU)はすでに7500億ユーロの「復興基金」創設で合意していた。この資金調達手段はタブー視されていた共同債の発行で行われることになった。
これはユーロ圏での財政の共通化への一歩前進との見方がある一方、ドイツ連銀のワイトマン総裁は、新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた経済の立て直しに向けた欧州共同債の発行は、1回限りの危機対応策にとどめる必要があるとの考えを示していた。
今回の欧州共同債は、銀行団を介して10年債を100億ユーロ、20年債を70億ユーロ相当発行する。10年債だけで1450億ユーロの注文があり、同年限の債券としては域内で過去最大の需要があったそうである。
ちなみにこの10年債の利回りはマイナスとなるようだが、トリプルAの高格付けの起債が少ないことに加え、ソーシャルボンドに対する投資家のニーズが強いことを示したものとみられる。
今回のソーシャルボンドの形式による欧州共同債は、予想以上の成功を収めたとも言えそうで、今後の発行への期待も強まると予想される。こうなるとワイトマン総裁が述べたような一回限りの対応となるのかどうかはやや不透明となろう。