Yahoo!ニュース

ソーシャルボンドとなる欧州共同債が人気

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Panther Media/アフロイメージマート)

 欧州連合(EU)は、新型コロナウイルス支援措置の一つの失業リスク緩和緊急支援(SURE)の財源調達に向けた第1弾の債券発行手続きを開始した。発行額は170億ユーロとなる(20日付ロイター)。

 これは欧州連合(EU)が初めて発行するソーシャルボンドとなる。ソーシャルボンドとは社会的な課題解決に資するプロジェクト・事業のための資金調達手段である。

 欧州連合(EU)はすでに7500億ユーロの「復興基金」創設で合意していた。この資金調達手段はタブー視されていた共同債の発行で行われることになった。

 これはユーロ圏での財政の共通化への一歩前進との見方がある一方、ドイツ連銀のワイトマン総裁は、新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた経済の立て直しに向けた欧州共同債の発行は、1回限りの危機対応策にとどめる必要があるとの考えを示していた。

 今回の欧州共同債は、銀行団を介して10年債を100億ユーロ、20年債を70億ユーロ相当発行する。10年債だけで1450億ユーロの注文があり、同年限の債券としては域内で過去最大の需要があったそうである。

 ちなみにこの10年債の利回りはマイナスとなるようだが、トリプルAの高格付けの起債が少ないことに加え、ソーシャルボンドに対する投資家のニーズが強いことを示したものとみられる。

 今回のソーシャルボンドの形式による欧州共同債は、予想以上の成功を収めたとも言えそうで、今後の発行への期待も強まると予想される。こうなるとワイトマン総裁が述べたような一回限りの対応となるのかどうかはやや不透明となろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事