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トランプ大統領のコロナ感染を金融市場はどうみていたのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米国のトランプ大統領が、ツイッターで自らが新型コロナに感染したことを明らかにしたのが、日本時間2日の13時頃であった。

 現職の米国の大統領が新型コロナウイルスに感染というのは、当然ながらサプライズとなり、大統領選の行方以前に、米国のトップの感染ということで先行きの不透明感が強まった。

 これを受けての金融市場の動きとしては、東京株式市場や東京時間でも動いている米株価指数先物が下落した。外為市場では円がドルやユーロに対して買われた。そして債券先物も上昇した。金の先物も上昇し、原油は下落するなど、典型的なリスク回避の動きといえた。

 しかし、その動きは結果としては一時的なものとなった。2日の米国株式市場をみると、大統領選や経済政策への影響が警戒されていた上に、9月の米雇用統計で非農業雇用者数が66.1万増と予想を下回ったこともあり、ダウ平均は一時400ドルを超す下げとなった。400ドルは大きいようにみえるが、パニック的な動きというよりポジション調整程度の下げともいえる。

 その後、与野党が協議中の追加経済対策の合意期待などから押し目買いが入り、2日のダウ平均は134ドル安となった。2日の米10年債利回りは0.70%と前日の0.68%から上昇していた。

 一時105円を割り込んでいたドル円は5日の東京時間で105円台半ばまで回復していた。これは5日にもトランプ大統領が退院かと報じられたこともあり、リスク回避の反動ともいえる。

 トランプ大統領のコロナ感染がどのように金融市場に影響を与えたのかといえば、結論としては一時的なリスク回避の動きがあった程度といえる。

 ただし、タイミングとしては11月3日の米大統領選挙を控え、こちらへの影響が気になるところ。

 トランプ大統領が早期に復帰すれば、回復力をアピールできるかもしれないが、そもそも感染防止をあまりしていなかったことへの批判も強まることも予想され、大統領選に向けたスケジュールも大きく変わり、トランプ大統領にとって今回のコロナ感染は逆風となることが予想される。

 しかし、今回のことで大統領の健康が非常に重要であることが認識されると、トランプ大統領よりも年上のバイデン氏で大丈夫なのかという危惧も働く可能性がある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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