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銀行の通帳もデジタルへ、デジタル通帳になると何が便利となるのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 みずほ銀行は2021年1月から、70歳未満の顧客が新しく口座を開く際に通帳の発行を希望した場合、1冊あたり1100円(税込み)の手数料をとる(21日付読売新聞)。

 これは低金利となり銀行の収益が悪化したことで、あらたな手数料収入を得るため、というわけではない。記事にもあったが、スマートフォンなどで見られるデジタル通帳の提供を始め、紙からデジタルへの移行を促し、業務の効率化を図るためである。

 ただし、既存の口座保有者や70歳以上の顧客に対しては紙の通帳が無料で配られるなど配慮される。

 現在はいたるところでコンピュータ化が進んでいるが、コンピュータを業務に利用したのは銀行などの金融機関が早かった。しかし、それはあくまで銀行内部の効率化や日銀や他の銀行とのやり取りが主体となり、銀行と個人の間でのシステム化はどちらかといえば遅れていたように思う。

 しかし、個人でのパソコンやスマートフォンの保有が進み、インターネットによって銀行のシステムと繋ぐことが可能となり、個人も銀行とネット上で取引ができるようになった。すでに通帳を持たず、振り込みや残高確認等はネットを使っている人も多いはず。

 私自身はデジタル通帳に移行してかなり経つが、銀行の支店にはほとんど行くことがなくなった。ネットで取引状況がつかめるため、確定申告などにもこのデータが生かせる。

 それでも銀行の支店のATMなどを使おうとする際に、何箇所にも振り込みをしている人を見かける。これをみてネットを使えば楽なのになと思っていた。

 まだまだネットでの口座管理の普及の余地はあるようで、それを少しでも拡大させるため、みずほ銀行はデジタル通帳の提供を始め、紙の通帳を有料化するものとみられる。

 デジタル・ディバイドとも呼ばれるパソコンなどの情報機器を使う人と使わない人の格差は問題となっている。しかし、スマートフォンの普及もあり、銀行取引もネットで容易となっており、この利用が便利であることの認識を広める必要もある。

 ネット上での金融取引はリスクがあるとの見方もあった。しかし、今のところ大きな事故や事件が起きてはいない。セキュリティについてもそれほど懸念しなくても大丈夫ではないかと思う。

 これによってデジタル通帳の普及が一層進むかといえば、なかなかそうはならないと思う。紙の通帳でなければ信じられないという人も意外に多くいるのかもしれない。キャッシュを大事にしている国民性もあり、デジタル通帳の普及には安全性と利便性を強調し、認識をあらためてもらう必要があるのかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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