OECD加盟国の2021年公的債務残高が前年比で約1270兆円増加、債務膨張はリスク要因ではないのか
経済協力開発機構(OECD)加盟37か国の2021年の公的債務残高が、2019年と比べて少なくとも約12兆ドル(約1270兆円)増大する見通しであることが10日、OECDの公開資料で分かった。債務残高は2019年の69兆6千億ドルから2021年には81兆6千億ドルと17%増える(11日付共同通信)。
世界の債務残高に占める割合の大きい国は、米国や日本、そして中国、さらにイタリア、フランス、イギリス、ドイツなどの欧州の国々を含め、OECDに加盟している。これらの国を中心として新型コロナウイルスの感染拡大とその防止のための経済活動の抑制により、各国の経済が大きな影響を受け、そのための支援を財政政策で行っている。その財源にとしては、国債発行に頼らざるを得ない。
非常時対応としてそうせざるを得ない状況は理解できる。しかし、たとえば日本をみてみると、年度の予算規模が100兆円あたりで、やっとブレーキが掛かり、国債発行額も減少しつつあったタイミングで、一気に予算規模が膨らみ、同時に国債発行額も急増した。
日本の2019年度の予算規模は105兆円規模であったのが、今年度は第二次補正予算を含むとすでに160兆円規模となり、これは過去最大規模となる。公債依存度も2019年度には35.4%に低下していたものが、2020年度は56.3%となり、戦後でみると最大となる。
米国でもこれまでに計3兆ドルの財政出動に踏み切っているが、さらなる経済対策を協議している。これの財源も国債発行に頼らざるを得ない。財務省は過去最高となる1120億ドル(約11兆8200億円)相当を四半期定例入札で発行すると発表した。10月までの3月間で、利付債の名目発行額は1320億ドル増える。これまで短期債主体の増発となっていたが、利付債に拡げる。この傾向は今後も続くものと予想される。
いまのところ金融市場では、これだけの規模の公的債務残高の増加をリスク要因としては認識していないようにみられる。これはFRBやECB、日銀などの中央銀行が金融緩和策として大量の国債を買い入れていること、景気の悪化とそれも影響した物価の低迷、さらには新型コロナウイルスの感染拡大そのものがリスク要因として捉えられ、リスク回避の動きとして国債が買われている側面もある。
しかし、今後の状況次第では金融市場で公的債務の膨張がリスク要因として捉えられることも予想される。欧州の信用危機の発端はギリシャの債務隠しにあったように、ちょっとしたきっかけで状況が変わることはありうるのである。