ロックダウンか制限緩和か、株式市場も揺れ動く
13日の米国株式市場は荒れた展開となっていた。
米製薬大手ファイザーは、開発中の新型コロナウイルスワクチンが米食品医薬品局(FDA)から優先的に承認審査を受けられる指定を受けたと発表した。ワクチンの普及により、経済活動の制限が解除され、世界経済の正常化にむけたへ期待から、13日のダウ平均は一時563ドル高となっていた。ところが、カリフォルニア州のニューサム知事の会見で、新型コロナウイルス感染の再拡大を受けて、レストランの店内飲食や劇場などの閉鎖を命じたことが明らかとなり、これをきっかけにハイテク株を中心に売りに押され、ダウ平均は結局、10ドル高で引け、ナスダックは226ポイント安となった。
ナスダック総合指数は12日に過去最高値を更新するなど、やや過熱感が出ており、カリフォルニア州知事の会見をきっかけに、利益確定売りが入ったとみられる。しかし、14日の米国株式市場はダウ、ナスダックともに上昇していた。今回の米株の上げ下げは、市場参加者の期待と懸念が両方表れたものとなっていた。
市場参加者の期待というのは経済活動の正常化といえる。もし効果のある新型コロナウイルスへのワクチンが開発され、症状を抑える薬が見つかれば、新型コロナウイルスはインフレエンザと同じような扱いとなりうる。そうなれば大規模なロックダウンなどが必要なくなる。しかし、ワクチン開発はそれほど容易なものでは当然なく、市場ではあくまで期待で動いている。
それに対し、新型コロナウイルス感染の再拡大が米国で起きており、こちらへの懸念も強まりつつある。ロックダウンによる景気への悪影響は、米雇用統計などの経済指標にも現れており、過去最大級の数値の悪化となった。これが再び繰り返されるという懸念によって、コロナ禍でも業績があがっていたハイテク株などに利益確定売りが入った。
新型コロナウイルスの今後の感染拡大の行方、ワクチンや特効薬の開発などについてはあまりに不確定要因が大きく、今後どうなるといった見方は当然見通せない。しかし、日本を始め各国の動きをみると、新型コロナウイルス感染による重症化をなるべく抑制するものの、ある程度の感染拡大はいたしかたなく、経済活動の正常化を優先しているように思われる。
たしかに大規模なロックダウンを続けると、体力の残っている企業を含めて企業業績が大きく悪化し、体力そのものが削がれよう。これによって金融機関などにも負の連鎖が起きれば金融危機を誘発し、本格的な経済金融危機が発生する懸念も出てくる。
しかし、それでも感染が拡大してしまうと、それによる経済活動への影響も出てこよう。このバランスをどのようにとるべきかは難しい。国によってもこのバランスの取り方は異なっており、現状はどれが正しいという結論も出せない。
経済活動の正常化も必要ながら、あまり急がず、様子をみながら、必要であれば再び感染拡大防止策も講じて、過剰な期待は禁物ながら、ワクチンなどの開発を待つということになるのであろうか。
ちなみに以前に取り上げた百年前のスペインかぜの流行が止まったのは、ある程度、国内に感染が拡がったことで、抗体ができたためとされている。しかし、その分、犠牲者が多く出ていたことも確かである。