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メガバンクのデジタル通貨とSuicaとの連携、キャッシュレス化に向けた自然な流れか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:西村尚己/アフロ)

 3メガバンクとJR東日本などは、デジタル通貨や電子マネーの相互利用に向けた検討を始める。3メガのデジタル通貨をJR東のSuica(スイカ)と連携できるようにする方向だとか(3日付日経新聞)。

 新型コロナウイルスの感染拡大は、キャッシュレス化にどのような影響を与えたのかは、今後落ち着いてから分析が行われよう。ただし、人や物の移動制限により、消費活動が停滞したことは確かであり、商取引そのものは制限されていたことで、現金ばかりでなく、キャッシュレスの利用も制限を受けていたことが予想される。

 今回は地震などの自然災害ではないことで、人と物の動きは鈍っても、お金は通常通りに流通していた。このため現金重視ということにはならず、むしろお札やコインに触れることにも用心し、カード利用が増えた可能性はある。また、ネット通販などの利用が多くなり、クレジット決済は増加したのではなかろうか。

 といった矢先に飛び込んできた上記のニュースであるが、新型コロナの影響はひとまず置いておくとして、日本国内のキャッシュレス化に向けた流れとしては自然な流れなのではないかと思われる。

 社会人にとっては定期券は必需品であり、その定期券が交通系カードとなっている人も多いと思う。少なくとも電車やバスなどを利用する人ならば一人一枚の交通系カードはもっていよう。

 Suicaそのものにクレジットカード機能を有したものもあり、カードではなくスマートフォンのアプリに組み込まれた交通系カードもあり、それらは頻繁に使われている。

 決済方式のひとつとして我々が日常使っているこの交通系カードの機能を充実させるためとして、デジタル通貨や電子マネーの相互利用は違和感はないと思う。ただし、銀行系のデジタル通貨を普及させるためとして使うとすれば、やや本末転倒かもしれない。あくまで銀行口座とも紐付けられて、安全に簡単に銀行口座の資金をSuicaなど交通系カードに移管・利用できるようになれば、利用は広がり、便利さが増す。

 このための協議会を立ち上げるとのことで、メンバーには3メガバンクのほか、JR東など10社程度が参加する見通しだとか。金融庁や経済産業省、日銀などもオブザーバーとして参加すると日経新聞は報じている。日本のキャッシュレス化にあってこれはそれほど無理のない流れかと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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