米中の関係悪化が新たな火種になるリスク

(写真:ロイター/アフロ)

 米国のトランプ大統領は14日放映のFOXビジネステレビのインタビューで、新型コロナウイルスへの中国の対応について、「とても失望している」と重ねて不満を示した。同時に「私たちは多くの措置をとることができる。中国との関係を遮断することもできる」と表明した(15日付日本経済新聞)。

 さらにトランプ氏は「もし関係を途絶えさせたら、5000億ドル(約54兆円)を節約できる」とも述べ、断交とも受け取れる強い表現で中国を威嚇した。

 米国の連邦職員向けの年金基金を運営する連邦退職貯蓄投資理事会(FRTIB)は13日、中国株への投資を延期すると発表したが、これはトランプ大統領の意向に沿った動きともいえる。

 米国と中国は今年1月に「第1段階」の通商協定で署名した。金融市場はそれを好感したものの、その直後に新型コロナウイルスの感染拡大により、金融市場は大荒れの動きとなった。

 トランプ大統領の支持率は株高によって支えられているとの見方もあるように、一時、ダウ平均など米国の株価指数が過去最高値を更新していたのはトランプ大統領の政策によるものと自負していた感もあった。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大により状況が一変した。

 株価そのものは戻りつつあるとはいうものの、米国での新型コロナウイルスの感染による死亡者は8万5千人と国別で最多となっている。そして経済活動が停止状態となっていることで、米国内の景気も大きく落ち込んだ。これも11月の大統領選挙にむけて現役のトランプ大統領にとっては逆風となりかねず、その怒りの矛先が新型コロナウイルスの発生源ともされている中国に向けられているともいえる。

 トランプ大統領は中国との通商協定の再交渉には関心がないとも強調した。習近平国家主席についても「今は彼と話したくない」との発言もあった。米中の関係悪化が通商協定に止まらず、金融にも拡大してきているだけでも、中国側はかなり警戒してこよう。

 トランプ大統領にとっては再選しか頭にない可能性があり、そのためには手段は問わないというか、それを阻止しようとするものはなんとしても排除しようとの姿勢にもみえる。大国のトップがあせりにも似た行動に出るとなれば、非常に危機的な状況も生まれかねない。

 14日の米国株式市場は原油高などを好感して買い戻されてはいたが、今後は米中の関係悪化があらためて材料視されかねない。トランプ大統領の言動にもさらに注意する必要がある。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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