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過去最大規模で歴史的な原油減産合意でも、原油価格は上げられず

久保田博幸金融アナリスト
(提供:Bandar Algaloud/Courtesy of Saudi Royal Court/ロイター/アフロ)

 サウジアラビアを中心とする石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」は日本時間13日未明、9日に続いてふたたび緊急テレビ会議を開いた。暫定合意した日量1000万バレルの協調減産への参加に難色を示していたメキシコに配慮し、協調の規模を日量970万バレルに引き下げ最終合意した(13日付日経電子版)。

 メキシコの抵抗により、OPECプラスの協議は決裂寸前となる場面もあった。これに対し、トランプ大統領は米国の石油生産の積極的な削減を拒みながらも、メキシコのロペスオブラドール大統領やロシアのプーチン大統領、サウジのサルマン国王との電話協議を通じて合意を仲介した(13日付ブルームバーグ)。

 今回の減産幅はそれでも過去最大規模となり、ここに米国が加わるのも初めてとなり、歴史的な合意となったとの指摘もあった。

 それでも原油先物価格の動きをみると、最終合意が伝わって東京時間の13日の早朝、一時、時間外取引でのWTI先物は買われる場面もあったものの、戻り売りに押され小幅な下落となっていた。

 すでに1000万バレルの規模の減産はある程度、織り込まれていたとみられる。むしろ合意できなかった際のほうがインパクトがあった可能性がある。しかも、合意内容が結果としてメキシコへの配慮から1000万バレルから970万バレルに減少したことも積極的には買いづらい要因となった可能性がある。

 WTI先物の日足チャートをみると3月中旬あたりから、20ドルから30ドルの間でのレンジ相場となっている。どちらかといえば戻り切れず、場合によると再度、下値を試すかのような格好ともみえる。

 歴史的な原油の減産が合意されても、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大とそれによる景気の停滞も、まさに歴史に残るような事態ともなっている。これによる原油の需要後退がどの程度の規模になるのか予想しがたいことも事実であろう。このため、この材料でも積極的に原油先物を買いづらい状況には変わりはない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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