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2020年度の補正予算に向けた日本国債増発の行方、虎の子は使わずか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 財務省は、新型コロナウイルス対策に伴う2020年度1次補正予算編成や財政投融資計画の追加に併せ、7月からカレンダーベース市中発行額を増額する調整に入った。複数の政府筋が明らかにしたと20日にロイターが報じた。

 規模としては、当初計画から16兆円程度の増額幅とみられ、リーマンショック後の2009年4月に上乗せした16.9兆円に迫る可能性があるとか

 当時を確認してみると、2009年4月に出された2009年度補正予算案の歳出規模は13兆9256億円。補正予算案の財源としては、建設国債を7兆3320億円、赤字国債を3兆4870億円と合わせて計10兆8190億円追加発行。さらに財投債の6兆1000億円を含め、国債合計で16兆9190億円追加発行された。

 カレンダーベースでは、40年債を各回1000億円増額し計3000億円増額、30年債を各回1000億円増額し計4000億円増額、20年債と10年債を各回2000億円増額し計3.6兆円増額、5年債を各回3000億円増額し計2.7兆円増額、2年債と国庫短期証券1年物を各回4000億円増額し計2.7兆円増額、流動性供給入札を各回1500億円増額し計2.7兆円増額。

 2016年の10年国債の毎月の発行額は2.4兆円規模となっていた。これが2020年度の当初予算による発行予定額は2.1兆円となっており、2016年あたりの規模に戻すことは可能となると思われる。

 近く国債市場特別参加者と協議し、具体策を詰めるとか。新型コロナウイルス感染を受けて、もしかすると会合そのものは開かれず、電話等での協議に切り替える可能性もある。そして4月7日に正式決定して発表するとされる。

 2020年度の前倒債の発行限度額は43兆円ほどある。市中消化額を増やさずともこれを使う手もある。しかし、2016年以降の減額もあってその水準に戻すことには抵抗は少ないのではなかろうか。日銀の国債買入や長期金利コントロールも効いていることで、これによって長期金利が大きく跳ね上がることも考えづらい。

 ある意味虎の子でもある前倒債については、これを使い切ってしまうことによってバッファーを失いかねない。それはそれでリスクも出てくるのではと個人的に見ていたが、今回はこれを使わず、市中消化額の増額で賄うようである。今後は税収の大幅な減少なども予想され、やはりある程度のバッファーが必要となろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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