一難去ってまた一難、今度は新型肺炎が市場のリスク要因に、世にリスクの種は尽くまじ?
英国の欧州連合(EU)離脱実現に必要な離脱関連法の法案が22日までに英議会を通過し、エリザベス女王が23日に裁可して成立した。2016年6月の国民投票で離脱を選択してからの混乱で、英国の合意なきEU離脱は無理との見方も強まっていたが、昨年末の総選挙で圧勝を遂げたジョンソン政権が、ついに大きな壁を突破した。
この後、激変緩和のため年末までは移行期間に入る。その間はEU法が適用され、EUとの新たな貿易協定締結を目指す交渉が行われる。
米中の通商交渉と並んでのリスク要因とされた英国の合意なきEU離脱というリスクはこれによって後退した。米中の通商交渉についても、これ以上悪化すると可能性はひとまず後退した。
中東の地政学的リスクも結果として、イランと米国の軍事衝突という最悪の可能性は後退した。北朝鮮情勢は気にはなるものの、いまのところ大きなリスク要因となってきてはいない。
これらにより、市場で懸念されていた大きなリスクが後退した。今年は、リスク回避の動きから、あらためてファンダメンタルズなどを意識した動きに戻るのかと思われた矢先に、あらたなリスクが発生した。
中国で新型のコロナウイルスによる肺炎が発生し、それが中国内に止まらず、米国や日本を含めて拡大してきたのである。
世界保健機関(WHO)は23日、中国で感染が拡大している新型のコロナウイルスによる肺炎についてスイス・ジュネーブで前日に続き緊急委員会を開き、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を見送った。
しかし、発表毎に感染者数は大きくなっており、その懸念はむしろ強まるばかりとなってきている。
WHOは、現時点では人から人の感染は中国で家族内と医療関係者に限定されており、世界的な脅威と指定するには時期尚早と判断したそうだが、委員会メンバーの意見は割れたともされている。あらためてWHOが緊急事態の宣言を行う可能性もありうる。
これもいわゆるテールリスクとかブラックスワンとも呼ばれるような市場にとって想定外のリスク要因となる。しかし、大きなリスクがやっと沈静化しつつあったところだけに、市場ではまたかとの認識も強いのではなかろうか。石川五右衛門ではないが、世にリスクの種は尽くまじか。