米中の関税合戦はひとまず休戦、関税合戦のこれまでの経緯

(写真:ロイター/アフロ)

 トランプ米政権は13日、中国の「為替操作国」への指定を解除した。中国が「通貨切り下げを自制する」と約束したためのようで、米中両国は15日にホワイトハウスで貿易交渉の「第1段階の合意」に正式署名するが、貿易戦争とともに通貨摩擦も「休戦」に入った格好となった(14日の日経新聞の記事より引用)。

 ただし、ブルームバーグによると、米国が中国からの輸入品に現在課している制裁関税のうち、昨年9月発動分は第1段階の貿易合意で予定通り引き下げられる見通しだが、それ以外については11月3日の米大統領選挙が終わるまで維持される可能性が高いそうである。

 この結果、大統領選終了後まで温存されるのは、第1段階合意の発効を受けて15%から7.5%に半減される中国製品約1200億ドル相当に対する追加関税と、約2500億ドル相当に対する25%の追加関税となる(ブルームバーグ)。

 14日付けの日経新聞の『通貨摩擦、「適温相場」で休戦 米が中国の「為替操作国」解除』とタイトルされた記事では、中国元の動きを通じてのこれまでの米中交渉の動向を追っていた。さらに「米中関税合戦 18年7月から1年超続く」との記事もあり、これらを元に、これまでの米中の通商摩擦の流れを確認してみたい。

 トランプ政権は2018年7月に、中国による知的財産侵害を理由として、818品目、約340億ドル相当の中国製品に25%の追加関税を課す制裁を発動した。これに対し、中国は即座に同規模の報復関税を実施した。これが米中関税合戦の始まりとなった。

 同年8月には中国からの輸入品160億ドル、279品目に25%の追加関税を課すと発表した。中国の知的財産侵害に対する制裁関税の第2弾となる。

 9月には中国からの輸入品2千億ドルを対象に第3弾の制裁関税を発動した。

 そして、2019年9月に1200億ドル分の中国製品を対象に制裁関税第4弾を発動した。家電や衣料品など消費財を中心に15%を上乗せした。この際には当初想定した品目すべてではなく、その一部が対象となった。

 その後、米国は2019年12月15日に予定していた1560億ドルの追加関税の発動を見送った。1月15日の米中の「第1段階の合意」を経て、2019年9月に発動した対中追加関税の追加関税率を15%から7.5%に引き下げる見通しとなっている。

 さらなる引き下げの有無は中国による第1段階合意の順守状況次第だとされている。

 このように米中の関税合戦はひとまず休戦状態となり、その一環として米国が中国の為替操作国を解除したものと思われる。トランプ政権としては、関税合戦の結果として国内経済の悪化も招きかねないことや、株価の動向など睨み、さらには米大統領選挙の行く末などもみての動きとみられる。今後も予断は許さないものの、米中の関係がさらに悪化するような事態はいったん回避されそうである。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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