イランの報復措置に至るまでの経緯、8日の東京市場は一時リスク回避の動きを強める
米国はイラクの首都バグダッドで行った空爆で、イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のガセム・ソレイマニ司令官を殺害した。また、親イラン派民兵「人民動員隊」のアブ・マフディ・ムハンディス副司令官も殺害された。攻撃には無人機が使用されたと報道されている。
ソレイマニ司令官率いるコッズ部隊はイラン革命防衛隊の特殊工作部隊で、主に海外での破壊工作を担当している。ムハンディス副司令官は「人民動員隊」の中でも最強硬派の「カタイブ・ヒズボラ」の司令官だとか。
そのカタイブ・ヒズボラは昨年12月27日にイラク北部・キルクークの米軍基地をロケット砲で攻撃して軍属の米国人1人を殺害。米軍は報復手段を訴え、翌28日にカタイブ・ヒズボラの拠点を空爆した。それに対し、31日からはバグダッド米国大使館へのデモが発生し、大使館の壁を放火するなど激化したが、これには「人民動員隊」が絡んでいたとされる。
これに対しホワイトハウスでは対策が検討され、トランプ大統領にエスパー国防長官らから複数のプランが提示された。そのなかでもある意味最悪ともいえる選択をトランプ大統領はしたようである。最終的に1月2日、ソレイマニ司令官殺害の命令を下した。
ソレイマニ司令官は中東でイランの影響力を広げたカリスマ的な存在であり、イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師に次ぐ影響力を持つとされる。ソレイマニ司令官は米国やイスラエルにとっても脅威であったことで、これまでも暗殺計画はあったようだが、そのイランにおける影響力の大きさもあって、これまで実行に移されることはなかった。
今回何故、トランプ大統領がその決断を下したのか。今年11月の米大統領選挙や大統領への弾劾裁判なども影響していた可能性もあったが、これで中東情勢が一気に悪化するリスクも孕んでいたことはたしかである。
イランは3日間の喪に服した後、ソレイマニ司令官の復讐を行うと宣言していたが、それを実行に移した。東京時間での8日朝、イランがイラクの駐留米軍基地に十数発以上の弾道ミサイルを発射した。これを受けて中東情勢がさらに緊迫化の様相を強めた。
8日の東京市場ではイランの報復措置を受けて、リスク回避の動きを急速に強め、日経平均は一時600円を超す下げとなり23000円割れ、ドル円は108円割れ、債券先物や金、そして原油先物は買い進まれたのである。