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米国とイランの対立で年初の金融市場は動揺

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 12月29日に米国のオブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は北朝鮮が長距離弾道ミサイルや核ミサイルの実験を行えば、米国は適切に対処するとの考えを示した。

 米国防総省は12月29日に、イラクとシリアで、イランを後ろ盾とするイスラム教シーア派組織「カタイブ・ヒズボラ」の拠点5か所を空爆したと発表した。

 これらを受けて昨年末の大納会となる12月30日の東京市場はリスク回避の動きから株安、債券高となっていた。

 しかし、日本が年末年始の休みの最中にさらに衝撃的な出来事が起きていた。米国防総省は1月2日、イラン革命防衛隊の精鋭組織コッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官を空爆で殺害したと発表したのである。

 カセム・ソレイマニ司令官の暗殺によって、イランと米国の関係は、1979年に始まった米大使館人質事件以来の深刻な対立状態に陥ったとBBCが伝えたように、これはかなり深刻な事態となった。

 トランプ大統領は4日、「イランが報復攻撃する場合、イランの52か所を攻撃目標地点とすることにした」と追加の攻撃を示唆した。

 今回、何故トランプ政権がこのような強行手段に出たのか。何かしら米国への攻撃などの情報を得ていたのかどうかは不透明。今年の米大統領選挙や大統領への弾劾訴追などが影響していたのではとの憶測もあるが、実際のところは明らかではない。

 トランプ大統領は1月5日に北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長に関し「私との約束を破るとは思わないが、破るかもしれない」と述べたとも伝わった。

 韓国政府当局者は5日、「米国はソレイマニ司令官除去を通じて、外交的に解決しなければ軍事的オプションを使用する可能性があることを明確に示した」ともコメントした。

 あらためて中東の地政学的リスクが意識され、北朝鮮問題も絡んでくるような事態となってきたのである。

 中東の地政学的リスクが意識されたことで原油価格は大きく上昇し、リスク回避の動きから円高が進行、株式市場は下落し、国債は買われた。

 昨年まで注目されていた米中の貿易摩擦や英国のEU離脱については不透明感はやや後退してきていたが、今年は早々に新たなリスクが表面化し、これによって金融市場が動揺する事態となった。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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