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堅実なクリステルさんの国債運用

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Motoo Naka/アフロ)

 第4次安倍再改造内閣で新たに入閣した15人が25日、9月の閣僚就任時の保有資産を公開した。家族分を含めた総資産は、小泉進次郎環境相が2億9001万円で最も多かった。全額が8月に結婚した妻、クリステルさんの名義。内訳は、国債1億5千万円、公社債1399万円など(産経新聞)。

 議員資産公開法は預貯金のなかでも普通預金は含まれないとか、名義が本人でなければ、その資産について公開する必要はないとか問題もあるようだが、それはさておき、億を超える資産が「国債」と聞いて、おやと思った方が多いのではなかろうか。

 この金額について小泉事務所は「キャスターやCM出演などの仕事で形成した資産を有価証券で運用している」とコメントしたそうだが、金額からもCMなどを含めたものの収入で得た資産であるとみられる。

 芸能人といえば、ある芸人の申告もれ案件が話題になっていた。その金額の多さにも驚かされたが、ある程度売れると億単位の収入があるであろうことはこれからもわかる。この芸人の場合の無申告はある意味、脱税よりも問題との指摘もあるが、それもさておき、なぜ「国債」なのかを今回注目したい。

 芸能人でも色々と資産運用をしている人も多い。政治家は何かしらの事業を手がけている親族の人も多く、株式や土地保有が多いとみられる。むろん現預金もそれなりにあると思うが、今回のような資産運用先が「国債」というのは異例ではなかろうか。

 この場合の国債は、推測ではあるが「個人向け国債」ではなかろうか。現在のように通常の国債利回りがマイナスとなっている環境下、通常の国債保有では利回りがマイナスとなる懸念がある。しかし、個人向け国債では最低保証金利の0.05%が付く。さらに1年経過すれば、財務省が額面で買い取ってくれるため、通常の国債や株式、金などにある価格変動リスクがない上、流動性リスクもない。日本国債にどの程度信用を置くのかは人によって異なるかも知れないが、金融市場での国債はリスクフリーとされている。

 個別株運用や投資信託という選択肢もあるが、国債というのは最も堅実な運用であると思う。今の資産運用は増やすよりも守ることが大事である。増やすのであれば、価格変動リスクに果敢に挑戦する必要があるが、そんな余裕もない人であれば、少なくとも元金の減らない個人向け国債は運用先として選択肢に上がる。

 たしかに預貯金という選択肢もある。しかし、個人向け国債の最低保証金利のほうが高いケースが多い。銀行の預金でも個人向け国債の最低保証金利を上回るものはあるが、その裏には何らかの理由、背景、リスクが存在していることも意識しておく必要がある。また、銀行預金は預金保険制度により保証される金額に制限があるが、個人向け国債にはそのような制限は存在しない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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