日銀の利下げ確率100%というのが意味するところ

(写真:つのだよしお/アフロ)

 『日銀利下げ期待急上昇 金利スワップ「10月会合で100%」も』との記事が10日の日経新聞電子版に掲載されていた。翌日物金利スワップ(OIS)から算出する市場が見込む日銀の10月の金融政策決定会合での利下げ期待が100%となったそうである。

 以前、とある講演の質疑応答でOISについて質問を受けたことがある。その答えとしては、私自身、翌日物金利スワップ(OIS)はほとんど見ていない、またOISはあくまで一部市場参加者の売買により形成されるものであり、それが的確に日銀の動きを予想しているとは思えない。それを使うのは市場参加者というよりも、マスコミ関係者ではないかといった答えをしたかと思う。

 米国にもFedWatchというツールがある。30日物FF(フェドファンド)先物の価格データを基に、任意のFOMCにおける政策金利変更の確率を出すものである。はっきりとはわからないが、参加者とすればOISよりもこちらの方が多いかもしれないが、その結果を前提に市場参加者がポジションを形成することは少ないのではなかろうか。

 そもそも債券市場に直接関わっている人達にとって、そのようなものを使うまでもなく、自分たちの得た情報を元に中央銀行の動きを予測している。いわゆる肌感で次回の金融政策決定会合での金融政策の変更の有無を感じているはずである。

 ここからはあくまで私の肌感となるが、10月の金融政策決定会合での利下げの確率はゼロに近いとみている。もちろん全くないとは言い切れないし、そのための準備も日銀はしているように思われる。

 ただし、それはあくまで最終手段であり、国債買入れの減額により量を落とすことは利下げの準備というよりも、マネタリーベースをこれ以上増加させないようにブレーキを掛けているように思われる。

 日銀は公表文での「マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。」との文言は据え置いている。だから、いずれまた量を増やす余地を作っているとの見方もあるようだが、それも見方は違うと思う。あくまでマネタリーベースは多少なり拡大していれば良いとの認識であろう。

 すでに日銀の政策目標は量ではなく金利である。「買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。」と言う表現もそのままながら、すでに年間80兆円という数字は有名無実化している。繰り返すがすでに量ではなく金利が政策手段なので、たとえ80兆円に届かなくても問題はない。

 ではその金利の引き下げはあるのか。もしこのままマイナス金利の深掘りを行えば、金融業界からのクレームは必須であり、何をしてくれるのか、というのが金融業界からの本音となろう。

 FRBが利下げをしているのに日銀が動かないのは何事かとの意見もあるかもしれない。それについては、本来、FRBと一緒に出口戦略をとらなければいけなかったのに、どうして正常化を日銀はしなかったのかと、むしろ問いたい。異常な緩和策を継続しているのが日銀であり、それを続けることで緩和効果は継続するとして、ここで金融機関を不安にさせる余計なことは必要ないというのが、私の意見となる。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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