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日本の消費者物価指数は低迷

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 9月20日に総務省が発表した8月の全国消費者物価指数は、総合指数が前年同月比プラス0.3%、日銀の物価目標となっている生鮮食品を除く総合は同プラス0.5%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合は同プラス0.6%となった。

 コア指数のプラスは32か月連続となったが、2017年7月以来の低い伸びに止まった。また、総合のプラス0.3%は今年2月のプラス0.2%以来の伸びの低さとなった。

 寄与度でみると、上昇に寄与したのはアイスクリームの値上げなどによる菓子類、そして外食や電気代となっていた。これに対して下落への寄与度は、生鮮食料品が大きく、これが総合の前年同月比の伸びを縮小させた。それだけでなく、ガソリン価格の下落なども影響した。さらに携帯電話の通信料の下落も物価を押し下げた格好となった。

 ガソリン価格については中東情勢の緊迫化などもあり、ここにきて値動きも大きくなってきているが、いまのところ方向性は掴めない。米中の通商交渉の行方も不透明感を強め、世界経済の減速懸念も強まっている。原油そのものへの需要が後退してくる可能性もある。

 ここにきての消費者物価指数の動向から見て、日本の物価は再びゼロ近傍になってくる可能性もある。日銀の物価目標は依然として消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の2%としているが、日本の経済実態からみれば、ゼロ%から1%あたりが落ち着きどころなのではなかろうかと思われる。

 ちなみに米国の8月の消費者物価指数は、前年同月比1.7%上昇。変動の激しいエネルギーと食品を除いたコア指数は2.4%上昇となっていた。FRBの物価目標はPCEデフレータであるが、消費者物価指数で見る限り、米国は2%近辺が落ち着きどころともみられる。

 国によって物価を巡る環境は異なるとともに、計算方法も異なってくる。グローバルスタンダードだからといって2%が絶対的なものではない。少なくとも金融政策で無理矢理に日本の物価を上昇させることは困難であることは明らかとなっている。もしそうであるのであれば、日銀は物価目標そのものを本来あるべき水準に引き下げるべきではないかと思うが、そうもいかないようである。

 10月には消費増税がスタートする。8月の消費者物価指数について総務省は「増税前の駆け込み需要が出ているかはわからない」との見解を示した。前回の2014年の増税時に比べると、いまのところそれほどの駆け込み需要が出ているようには思えない。2014年の際にはこの駆け込み需要に円安効果も加わって物価の上昇圧力となっていたが、どうやら今回はそのときほどの物価上昇圧力とはなりそうもない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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