サウジアラビアの石油関連施設への攻撃による影響
サウジアラビア東部にある国営石油会社サウジアラムコの石油施設2カ所が14日に攻撃を受けた。これにより失われた原油生産能力は日量570万バレルとなり、世界の原油供給量の6%弱に相当する。
この報道を受けて、16日の原油先物価格は急騰し、WTI先物10月限は8.05ドル高の62.90ドルとなった。通常、1ドルも動けば大きな動きとされるだけに、8ドルもの上昇はかなり大きい。北海ブレント原油先物は2008年以降で最大の上げとなったようである。
この攻撃を巡っては、イエメンの親イラン武装組織フーシ派が無人機(ドローン)で攻撃したと犯行声明を発表した。イランは関与を否定している。
サウジ国営テレビは、国防省が18日に記者会見を開き、イラン製武器の使用など同国の関与を示す証拠を提示すると報じた。
今回の攻撃をめぐり、ポンペオ米国務長官は直後にサウジと敵対するイランを名指ししていたが、トランプ大統領は断言を避けている。
そして、サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相は17日、攻撃を受けた石油施設の生産能力が早期に回復するとの見通しを示した。
これを受けて17日の原油先物は大幅反落となり、WTI先物10月限は3.56ドル安の59.34ドルとなった。18日のWTI先物10月限も1.23ドル安の58.11ドルとなっていた。
実際に攻撃を仕掛けたのは誰なのか。それにイラン政府がどれだけ関与しているのか。トランプ大統領はイランと対話する準備があると述べていたが、イランの強硬派が対話阻止のために仕掛けたとの見方もできなくはない。
米国も今回の攻撃の犯人捜しを必死に行っているようだが、米国の対応を見る限り、イラン政府が直接関わっているというよりも一部の暴走ともみている可能性もある。これは何かしらの犯人を特定できる証拠が出ない限り、何ともいえない。
イラン政府が直接関わっているようだとイランとサウジアラビアの緊張がさらに高まり、米国の軍事介入の可能性も出てくる。さすがにそこまでイランが追い込まれているようにもみえない。安倍首相は17日、今月下旬にニューヨークで行われる国連総会に合わせてイランのロウハニ大統領と会談することを明らかにした。
サウジアラビアの攻撃を受けた石油施設の生産能力が早期に回復するとの見通しについても不透明感は強い。ただし、これは実際の被害状況などを確認しないとわからないところでもあり、こちらもややベールに隠されている。
ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は16日、関係者の話として、サウジアラビア政府が国営石油会社サウジアラムコの上場延期を検討していると報じた。無人機の攻撃を受け、完全復旧するまでの新規株式公開(IPO)の先送りを議論しているそうであるが、そうなるとサウジアラビア政府にとっても予定が狂う恐れがあり、楽観的な見方を示したともいえなくもない。
今回のサウジアラビアの石油施設への攻撃は偶発的なものであったのか。これでイランとサウジアラビアの緊張がさらに高まり、軍事衝突の可能性も出てくるのか。それとも一過性のものとなり、あらためて対話を探ることになるのか。攻撃された施設の被害状況はどの程度で、原油生産にどの程度の影響が出るのか。あまりに不透明なことが多いこともあり、事態の推移を見守るしかない。